本来は普通なのに“熱くなる”親たち

 都内の私立女子高校で国語を教える矢野紗季さん(27歳/仮名)は、

「以前、担当していたある生徒に、数学の微分積分に関する問題の解法を聞かれたことがあり、わからないと答えました。すると後日、その生徒の親から『こんな問題もわからない担任に任せられない』と学校に電話がかかってきていました。その後、その生徒と仲の良かった生徒の親からも、面談のときに『高校生の問題もわからないんですね』と言われた」

 と話した。

 矢野さんは「カスタマー・ハラスメントなのかなと思いました。でも、生徒をカスタマーと定義してよいものかわからないし。上司にもよくある話、と言われてしまい嫌な気持ちだけが残った状態です」と困惑した様子だった。

 学校と教職員向けの危機管理相談をしている「学校リスクマネジメント推進機構」の宮下賢路代表は、「受験への熱が高い親ほど、本人の自覚がないままモンスターペアレント化している」と語る。

「この手の親は、明確に『モンスターペアレント』である場合と、子への熱を注ぐあまり『一時的に熱くなっている』場合があります。前者のような親は、時期を問わずいると思いますが、後者の親は受験熱が過熱してくる9月~1月くらいにかけて増えていくものです。小学校で非常に多いですが、中学、高校でももちろんあります。私立か公立か、進学校なのかなど、学校による部分が多いですが、受験を控える冬は増えている傾向にあります」

 さらに宮下氏はこう分析する。

「わざと皮肉を言っている側面もあるかもしれないですが、どちらかというと本来は『冷静になれば話は通じる』のに、受験期でわが子に対する焦りなどから一時的に熱くなっており、本人の自覚がないままモンスターペアレント化しているパターンは非常に多いです。受験に対して貪欲な親御さんは、普段は非常に情報収集をしているので冷静に論点を分析して面談をしていますが、特有の焦りから正常な自分ではいられなくなっています。生徒以上に、親のほうに余裕がない現れだと思います」

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皮肉を言わせない環境はどう作るのか