生徒の親は“客”なのか

 しかし、親子ともに余裕がないとわかっていても、教員側からすると“ハラスメント”ともとられかねない皮肉っぷりだ。

「これは親の意識の違いです。学校の形態によって異なることは出てきますが、そもそも学校教育において親は“カスタマー”ではなく“協力者”です。カスタマーであるという意識があると、どうしても責任を教員側に押し付けがちですが、あくまで親という立場は、子どもの教育について第一義的責任を有する学校の協力者ということを忘れてはいけません」

 どのような親にせよ、皮肉を言われた教員側は嫌な気持ちを抱えることになる。宮下氏によると、特に若手の教員を中心に、保護者とともにヒートアップしてしまうケースも多いという。

「現場レベルで言うと、若手の教員はまじめな人が多いので、言葉一つ一つに向き合っています。熱くなり、本来の話の目的から外れた話題で保護者と口論になることも珍しくありません。しかし、口論になると収束までに時間がかかり、他の業務が逼迫して教員自らを苦しくさせてしまうこともあるのです」

 では、教員側はどのような対応をとる必要があるのか。

 宮下氏は、ロールプレイングの重要性を指摘する。

「保護者に対して時間を意識させながら会話することは有効な手段です。面談などの場合は極力、事前に『〇分の面談で、本日は○○についてお話ししたいと思います』などと時間と内容を伝えておく。論点がずれた話をまくしたてられたり、“皮肉”を言わせたりしない環境作りをすることも大事だと思います。教員という仕事は、どんな学校であっても激務な職業であることには変わりありません。だからこそ、大切な生徒のことを考える時間を増やすためにも、保護者への対応を円滑に進めるためのロールプレイングを何回も行う必要があります。保護者役、教員役などに分けて、さまざまなパターンの保護者を経験する。そしてそれを校長や教頭などの管理職とともに共有し、共通認識を持つことも重要です」

 冷静であるはずの親が熱くなりすぎて周りが見えなくなる姿は、子どもにはどう映るだろうか。

(AERA dot.編集部・小山歩)

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