(撮影/インベカヲリ☆)
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 現代日本に生きる女性たちは、いま、何を考え、感じ、何と向き合っているのか――。インベカヲリ☆さんが出会った女性たちの近況とホンネに迫ります。

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どうしてそんなに働くんだ

 作家とともに、数々の本を世に生み出している編集者の雪乃さん(40代後半/仮名)は、よく笑う、朗らかな女性だった。化粧っ気のない顔と、ショートカットの黒髪から、人当たりの良さを感じる。

 だが、そんな雰囲気とは裏腹に、出版社で激務をこなす毎日を送っていた。先月の労働時間は、過労死ライン超えに該当する260時間。過去には、ストレスで円形脱毛症になった時期もあるという。40代で遅めの結婚をしたが、その生活スタイルを変えるつもりはなかったようだ。

「夫からは、『どうしてそんなに自分を痛めつけるようにして働くんだ』って言われます。自分を大切にしていないように見えるらしくて」

 その夫は、数年前に地方に転勤となり、夫婦は離ればなれに暮らしている。

仕事を辞めてこっちに来いよ

「3日に1回くらいは、『一緒に住もうよ、仕事を辞めてこっちに来いよ』って言われるんですよね。『発言小町』とかを見て、こういうとき他の人ならどうしてるのかな?ってネット調査したりしているんですけど……。インベさんならどうしますか?」

 雪乃さんは、不安げな顔で聞いてきた。だが、迷うフリをしながら既に答えは出ているのだろう、と思った。

「仕事を辞めて、自分の稼ぎがなくなることへの恐怖がやっぱりすごいんですよ。夫の前にも結婚しかかった人がいたけど、遠距離恋愛をしている間に浮気をされて別れたんですね。なぜ遠距離をしてまで、自分で稼ぐことにこだわったかっていうと、やっぱり恐怖感からだと思うんです。失恋のショックは大きかったし、もう二度と同じことは勘弁と思っているのに、なんでまた繰り返すんだろう。でもやっぱり、稼ぎを手放すのは本当に怖いんですよ」

 苦労して積んできたキャリアを手放したくない気持ちは、私にもわかる。だが、雪乃さんの「恐怖心」は、そういう話とも少し違うようだった。

 一体、どんな背景があるのだろう。

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