野呂佳代

「ぽっちゃりでなかったら、何も残らなかった」

 元アイドルで“バラエティー枠”だった野呂が、これほどドラマで重宝されるようになった理由は何か。前出のスポーツ紙記者が続ける。

「『アンメット』では記憶障害の脳外科医を温かく応援する同僚医師、『エンジェルフライト』ではギャルっぽい手続き担当、『西園寺さん』では主人公に寄り添う親友をそれぞれ演じ、いずれも作品に良いアクセントを与えていました。過去のインタビューで『この体形の私が求められているので』『私がぽっちゃりでなかったら、何も残らなかった可能性があります』などと語っていましたが、彼女が起用されることで作品にリアリティーや温かみが加わり、視聴者の共感を得る要素が強化される。結果、良作が多くなり、『野呂目当て』というわけではないにせよ、出演ドラマに期待値が生まれているのだと思います。もっとも野呂が明かしたところによれば、出演作は全てマネージャーが選んでいるとのことで、その眼力はおそるべしです」

 視聴者の中には、もはや野呂がAKB48の元メンバーだったことを忘れている人もいそうだが、アイドル誌の元編集長も現在の活躍ぶりに舌を巻く。

「06年のメジャーファーストシングル『会いたかった』では当時、最年長記録の22歳362日で選抜メンバーに選出されましたが、同期だった大島優子らの陰に隠れ、けっして人気メンバーだったとは言えませんでした。ファンにぽっちゃり体形をいじられることも多く、グループ内でも“お笑い担当”のポジションでしたね」

 実際、同期の佐藤夏希と「なちのん」を結成して07年、08年の「M-1グランプリ」へ出場しているが、いずれも2 回戦で敗退している。

「10年からはSDN48に移籍してキャプテンを務めましたが、グループ自体が伸び悩み、翌年に解散。卒業後も所属の太田プロには前田敦子、大島、指原莉乃といったAKB48の歴代エースが在籍しており、野呂にまで仕事が回ってくるのか不安視されていました。そこから地道にバラエティーで活動し、テレビプロデューサーの佐久間宣行氏にコントでの演技力を評価されたことで女優業にシフトします。そして今につながるわけですが、この大逆転劇はまったく予想していませんでしたね」(同)

 地道な努力の結晶ともいえる野呂の“出演ドラマに外れなし”の伝説は継続されるのか。「ホットスポット」の評価に注目したい。

(泉康一)

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