「おまえら、いくら持ってんねん」
「お金なんて、持ってません」
その時、ものすごい美人の嫁さんがこう言ったのです。
「こいつら、絶対金持ってるわァ」
僕は、この言葉を聞いてびっくりしてしまいました。うまく言えませんが、お腹に子供を宿している女性がこんなことを言うのか、と思ったのです。いや、妊娠しているからこそ必死だったのかもしれません。部屋の襖に大きな穴が開いていましたが、それは、もしかすると彼女が親玉にしばかれた痕跡かもしれません。
親玉がおごそかに言いました。
「これから毎日、俺たちにしばかれて、お金を渡しますと契約書に書け」
冷静に考えるとアホみたいな内容ですが、僕たち3人は本当に手書きで契約書を書かされたのです。
契約書
私は毎日●●さんにしばかれて、いつでもお金を渡します。
大城文章
「おまえら、ハンコ持ってるか」
そんなもの、いま持ってるわけがありません。すると親玉が嫁さんに向かって、
「おい、包丁持って来い」
と言いました。嫁さんがかいがいしく台所から包丁を持ってきました。
「おまえら、ひとりずつ手ぇ切って血判押せや」
最初に包丁を渡されたワダは、うっ、うっ、うっ、と変な声を出すだけで、まったく切ることができませんでした。極限状態だというのに、僕はワダの姿を見ていたら、なぜか急にへらへら笑いがこみ上げてきました。
すると親玉が、
「こうやるんじゃー」
と、お手本に自分の指を切ってみせました。
ワダは手をつかまれて、無理やり人差し指に包丁を当てられました。ワダは悲鳴を上げました。
「痛てー」
僕は、一発でシュッと切れました。
サイトウも無理やり切らされましたが、血判を押した瞬間に気絶してしまいました。僕は一瞬芝居じゃないかと思いましたが、サイトウはその後もずっとピクピク痙攣していました。
親玉が僕とワダに向かって言いました。