Z世代の女性向けエッセイ投稿サイト「かがみよかがみ(https://mirror.asahi.com/)」と「AERA dot.」とのコラボ企画は第5弾。「10年後の女の子のために」をテーマに、エッセイを募集しました。多くの投稿をいただき、ありがとうございました。
投稿作品の中から優秀作を選び、「AERA dot.」で順次紹介していきます。記事の最後には、鎌田倫子編集長の講評も掲載しています。
ぜひご覧ください!
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空港からの高速バスを降りると、ムワッとした空気が肌にまとわりついた。ただ、意外と東京ほどの蒸し暑さはないかもしれない。バス停にはタバコを吸う老人がいた。まるでタイムスリップしたみたいだ。
タイムスリップ。まぁ、あながち間違ってもいないかもしれない。
今日は、昔住んでいた長崎での、中学時代の同窓会だ。
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長崎に住んでいたのは、小学校5年の春から、中学2年の冬までだった。
私は転勤族育ちで全国あちこちに住んでいたけれど、長崎に引っ越す直近まで住んでいたのは東京だった。東京の小学校はとても小さく、全校生徒で120人程度で、全国あちこちから転校してきた子が多数いた。韓国や南米など、外国籍の子もクラスメイトだったし、違う学年には車椅子の人もいた。個性豊かで多様性溢れる学校だった。いじめや不登校もあったけど、かばってくれる子もいたし、それらの問題に熱心に取り組む先生もいた。
ただ東京は衛生環境の問題か、アトピーで肌が荒れていたり、喘息を持ってる生徒は多数いた。私も、顔やら足やら、さまざまな部位にアトピーによる肌荒れがあった。
その状態で長崎に引っ越してしまったものだから、「その顔のブツブツ、気持ち悪か」などと言われたり、いじめの対象になることもあった。小学校はまだマシだったものの、そのまま中学に上がってからは、バイ菌扱いして避ける生徒たちもいる一方で、ヤンチャだったり不良っぽい男子に殴られる、蹴られる、羽交い締めにされる、掲示物や持ち物を棄損されるなどいろいろなことをされていた。
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中2の冬に、隣県の佐賀の学校に転校したことで、私はほぼ初めて「いじめられない学校生活」を過ごすことができた。
そんな私が長崎の中学の同窓会に出たのは、意外に思う人もいたかもしれない。ただ、いじめられていたからといって友達が0人というわけではなかったし、それでも私は人が好きで、信じたい思いもあった。そもそも、昔の、いじめられてた頃の私とはもう違うということを、同級生たちに知ってもらいたかった。
同窓会では、私に暴力を振るっていた男子たちはみんな謝ってくれた。とても意外だったけど、それは素直に嬉しかった。
そして、意外なところで事件は起こった。