2万人以上のリーダーを対象にコーチングやリーダーシップの指導を行ってきた林健太郎さんは、相手の期待と自分の期待をすり合わせることの重要性を説いている。だが、具体的にどうすれば、いいのか? 林さんは、著書『人間関係の悩みがなくなる 期待しない習慣』(朝日新聞出版)の中で、職場、恋人、友人など様々な状況で活用できる会話術を詳しく解説している。今回は職場と夫婦間で意識してほしい会話術を、本書から一部を抜粋・再編集して詳しく紹介する。
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会社での期待は、なにも上司から部下に寄せられるものだけではありません。部下も当然、上司に期待しながら毎日の会社生活を営んでいますよね。
私が作った造語ですが、「上司と天気は変えられない」というぐらい、部下側の期待を上司に理解してもらい、叶えさせることは難しいのかもしれません。
そんな前提で、思い通りにいかない時にも活用してほしい会話術をお伝えします。
期待をすり合わせるための会話術 職場の部下編
・相手の期待を特定する
部下側が上司に期待する。そんな状況は、意外と多くあると思います。
例えば、「仕事ぶりを評価してほしい」ということだったり、「現場の状況をもう少し考慮してほしい」といった期待が挙げられるかもしれません。
そして、意外と多いのが、上司からの乱暴な指示やフィードバックに対して、「こっちの身になって考えてほしい」ということだったりします。
私の知人で、総合病院の循環器科で働いていた看護師さんが、上司との具体的なやりとりを教えてくれました。循環器科のお仕事は人の生死に直接的に関連するため、正確性とスピードが重視される現場なんだそうです。そんな現場で働く知人は、仕事の意味や意義をしっかり理解して丁寧に働きたいタイプ。
当時の上司からは常々、「時間内に終わっていなかったよね。時間は守ろうね」と指摘を受けていたそうです。そんな彼女は常に、「こっちの身になって考えてほしい」と心の中で呟つぶやいていたそう。
さらに、「他の人が気づかない部分でフォローしているんだけどな。そういうところ気づいてほしい」という期待を抱いていたそうです。「仕事だから、言ってることはわかるけど、もっと私の主張をわかってくれている感がほしいんだよね」と口にされていたのが印象的でした。
物理的に策を講じてほしいというよりは、感じていることや考えていることをわかってほしい、というのが本質的な期待だったということですね。