朴被告の4人の子どもたちと、亡き妻・佳菜子さんの父(左)と、朴被告の実母(左から2番目)。「パパが帰ってきたら、タックルをきめようと思います。なんで今までいなかったんだよっていう気持ちと、おかえりっていう気持ちをこめて」(次女/右)

 幼いころの記憶があいまいな次女は、両親の姿を知るために、昔撮ったホームビデオを片っ端から見たという。

「お姉ちゃんが動物園でおにぎりを地面に落として、カラスとかハトがたくさん来て泣いてました。そういう他愛もない姿を見返すと、ちゃんと家族だったんだなって安心しました」

 最高裁が東京高裁への差し戻しを決めたとき、きょうだいは大喜びした。しかし今年7月、差し戻し審で再び有罪となり、小学3年の次男は夏休み中ことあるごとに泣いていたという。取材中も「パパとミニオン(の映画)見たかった」などと、ふくれっ面で話した。

長女は「司法に裏切られてきた」

 一方、長女は驚くほど冷静だ。

「パパの無罪を信じていたけど、心のどこかで、このままうまくはいかないのでは?とも思っていました。今まで司法に裏切られてきたから、期待できなくて」

 長男は、「パパのほかにも冤罪で苦しんでいる人はいると思うから、きちんと裁判をしてほしい」と、冤罪被害者の存在にも心を寄せる。

 そんな孫たちの様子を見ていたSさんは、「みんなしっかり育っているよ……」と切ない表情を浮かべた。昨年、朴被告の保釈を求めて東京高裁に上申書を提出したSさんは、今回の上告にあたり、再び最高裁にあてた上申書を書いた。

<朴くんは佳菜子と生まれた4人の子どもたちと一緒に幸せに暮らしていた ~中略~どうか一日も早く、朴くんを帰してくださるよう、嘆願いたします>

 昨年、異例の差し戻しを決めた最高裁は、再び届いた上告の訴えをどう受け止めるのか。

朴被告の4人の子どもたちと、亡き妻・佳菜子さんの父(右から2番目)と、朴被告の実母(右)。次男(右から3番目)は取材後、朴被告に手紙を書き、「ぼくもインタビューしたよ。がんばったよ。さいばんきっとかつよね。パパ早くかえってきて」と伝えた。手紙を書きながら、「この便箋が全部使い終わっても帰ってこないのは嫌だね」と話していたという

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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