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 90歳を迎えた今も現役医師として週4日高齢者施設で働いている折茂肇医師。高齢者の診療は、高齢者ならではの体や病気の特性をよく理解した上で、健康管理することが大切と述べる。診療の際にもっとも心がけていることは、複数の薬を服用している「多剤処方(ポリファーマシー)」の確認だという。「口で言うのは簡単だが、実際に行うのは難しい」と語るその理由とは?

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 折茂医師は、東京大学医学部老年病学教室の元教授で、日本老年医学会理事長を務めていた老年医学の第一人者。自立した高齢者として日々を生き生きと過ごすための一助になればと、自身の経験を交えながら快く老いる方法を紹介した著書『90歳現役医師が実践する ほったらかし快老術』(朝日新書)を発刊した。同書から一部抜粋してお届けする(第3回)。

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 私は90歳になる現在も医師として高齢者施設で週4日勤務しているが、入所者たちへの対応をする上で、気をつけていることがある。それは、高齢者ならではの体や病気の特性をよく理解した上で、健康管理することが大切ということだ。

 新たに入所した人には、健康状態や持病などについて細かく把握することに加え、服薬の状況、とくに複数の薬を服用している「多剤処方(ポリファーマシー)」の場合は十分に確認を行うようにしている。

 高齢になると、一つではなく複数の病気を持つことも多い。全く関係のない病気がいくつか重なることもあれば、それぞれの病気に関係があって、相互作用的に別の病気を引き起こしたり、悪化させたりするものもある。一見、無関係のように思えて、実は共通の原因で起こっている病気もある。

 注意が必要なのは、複数の病気を持っているということは、複数の病院や医師の診療を受けている可能性があるということだ。

 例えば、脳梗塞の既往と高血圧があり、白内障もある人は、脳梗塞の治療を受けた総合病院と、ふだんから高血圧の管理をしてもらっている近所のクリニックと、白内障を診てもらっている眼科に通っている、ということが考えられる。それらの治療が別々に行われていて、薬も全く別々に処方されているとしたら、薬の飲み合わせなどから、予想できないトラブルが起こる可能性も想定される。

75歳以上の約4人に1人が7種類以上の薬を処方されている

「令和4年社会医療診療行為別統計」によると、75歳以上では、薬剤を5〜6種類院外処方されている人が16・3%、7種類以上院外処方されている人が23・8%いる。75歳以上の約4人に1人が7種類以上の薬を処方されているのだ。そして、高齢者では、処方される薬が6種類以上になると、副作用を起こす人が増えることがわかっている。多剤処方による転倒の発生数増加を報告する論文も多い。

折茂肇(おりも・はじめ)医師/東京大学医学部老年病学教室・元教授、公益財団法人骨粗鬆症財団理事長、東京都健康長寿医療センター名誉院長(撮影/写真映像部・松永卓也)
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