そのため、高齢者の診療では、できれば主治医を一人定め、すべての医療機関でどのような治療を受け、どのような薬を処方されているか、一括して把握しておけることが理想といえよう。

 もう一つ、高齢者に注意が必要なこととして、一般的な成人と高齢者では、薬の作用の仕方が異なることが挙げられる。さらに、個人差も大きく、薬の効き方や副作用の現れ方も人によってさまざまだ。前述のように、高齢者は複数の病気を持っていて、処方されている薬の種類も多い。

 加えて、高齢者ゆえ、薬の服用方法や服用する量を間違えてしまうことも少なくない。そう考えると、薬に関しては、高齢者の特性と、薬剤について十分な知識を持つ医師がしっかり管理すること。その上で、できるだけ服用する薬の種類と量を減らすことが大切なのだ。

 私は高齢者が入所する際、最初に服薬状況を確認し、多すぎる場合は、減らすように指示している。一人ひとりに対してどういう判断でどの薬を減らすのかを考える。

折茂肇(おりも・はじめ)医師/東京大学医学部老年病学教室・元教授、公益財団法人骨粗鬆症財団理事長、東京都健康長寿医療センター名誉院長(撮影/写真映像部・松永卓也)

 口で言うのは簡単だが、実際に行うのは難しい。日本人は薬が好きで、薬を飲むことでどこか安心しているところもある。また、本人はよくても、入所者の家族から「なぜ薬を減らしたんだ。病気が悪化したらどうするんだ」と問われることもあり、家族に対する説明もきちんとしなければならない。日本の高齢者の多剤処方は、難しい問題なのだ。

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