
90歳を迎えた今も現役医師として週4日高齢者施設で働いている折茂肇医師。約90人の高齢入所者の健康管理を行っている。「この年齢になって毎日働きに出かけるのは大変」と言いながら、日々出勤する理由は何なのか。その健康の秘訣は・・・。
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折茂医師は、東京大学医学部老年病学教室の元教授で、日本老年医学会理事長を務めていた老年医学の第一人者。自立した高齢者として日々を生き生きと過ごすための一助になればと、自身の経験を交えながら快く老いる方法を紹介した著書『90歳現役医師が実践する ほったらかし快老術』(朝日新書)を発刊した。同書から一部抜粋してお届けする(第2回)。
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私の高齢者施設での仕事を少し紹介しておこう。
勤務は平日の月曜日から木曜日までの週4日。施設での役割の一つが、医師として約90人の入所者の健康管理を行うことだ。毎日、出勤すると看護師から入所者の健康状態の報告を受け、病院での受診や検査が必要と判断した場合には、それができるよう手はずを整える。週1回、回診があり、入所者一人ひとりと対話をしながら、そこでも健康状態を確認している。
正直に言って、この年齢になって毎日働きに出かけるのは大変だ。体も疲れるし、人の健康を管理するという責任感の重さも肩にのしかかる。しかし、仕事だから行かなければならない。そして、この、行かなければならないという状況が、意外と大切なのではないかと思っている。
施設に行けば、看護師やほかのスタッフから入所者について報告を受けたり、相談されたりする。回診すれば、入所者から「先生と話したい」「先生が来てくれるのを待っていた」と言われ、みんなが集まる食堂までわざわざ車いすで出てきてくれる方もいる。そうやって話をすることは紛れもなく私にさまざまな刺激を与えてくれるし、自分が必要とされているという実感は、私を元気にしてくれる。行かなければという思いが、毎日に張り合いを与えてくれているのだ。それに、働きに行ける場所があるのは、ありがたいことでもある。
高齢者が働く理由は「体によいから」「面白いから」
医師という特別な資格を持っているからこそできることと言われれば確かにそうかもしれないが、一般的にみても高齢者の就業率は年々上昇傾向にあるという。