「2千万円もらいました」ダメ元で聞いたらあっさり
ただ、国の機密書類が掲載されることもあることから、「国の中枢に共産党の秘密党員がいる」とも噂される。真偽を藤田に問うと、「秘密の役割を持ってスパイ活動をするようなことは一切ない」と一笑に付す。
「もちろん情報提供者はいます。しかし彼らとは必ず一線を引き、金品は受け取らないなど徹底しています」
一方で大手メディアは記者クラブにも加入し、取材源に取り入り情報をもらうため権力との緊張関係がなくなる。大手メディアがスクープを打てないのは、そうした弊害も出ているのではないかと指摘する。
「情報へのレスポンス(反応)が勝負」
こう話すのは、矢野昌弘(50)。
先の衆院選終盤の10月23日、「裏金議員へ2千万円支給」のスクープ記事を書いた赤旗の社会部記者だ。自民党本部が裏金問題で非公認とした候補者の政党支部にも2千万円を支給していたこの問題は、先の衆院選での自公過半数割れのトドメの一撃となった。
矢野は記者歴24年。例えば11年、九州電力が組織ぐるみで原発再稼働「賛成」のメールを送るよう指示した「やらせメール」など、数多くのスクープを放ってきた。
「情報を提供してくれる人は、新聞記者である私が情報を重要で面白いと思ってくれるか、そこを知りたがっています。だから得た情報に対し、これは大事だ、面白い、調べれば何か出てくるんじゃないかという、レスポンスが重要になります」
2千万円のスクープは、選挙公示前に矢野が永田町で「支部政党交付金支給通知書」を入手したのがきっかけだった。そこには衆院選の「活動費」として1500万円、「公認料」として500万円、計2千万円の交付金を各支部に支給すると記載されていた。交付金は萩生田氏ら非公認となりながら党支部長のままの8人の支部にも支給されるのか。疑問に思った矢野は、支部の事務所に取材して驚いた。
「どうせ答えてくれないだろうとダメ元で聞いたら『2千万円もらいました』とあっさり認めて。公認候補と同額だったので、『えー!!』という感じ。情報をくださった方は、ものすごく喜んでくれていると思います」
社会部長の三浦誠(56)は、スクープにたどり着くかどうかは「問題意識の差」だと話す。
「自民党が政党支部に2千万円を支給していたのは、一般紙の政治部記者も知っていたはず。それを『当たり前』と思うか『おかしい』と思うか、意識の違いだと思います」
そして「追及する意思」だと言う。
「ジャーナリズムの役割は権力監視。相手をやっつけようというのではなく、おかしいことはおかしいと書く。そのためには常に追及する意思を持ち、そこにこだわれるかどうか。諦めずにやる。そこが赤旗の力です」
(文中一部敬称略)(編集部・野村昌二)
※AERA 2024年12月2日号