ヤンキース時代の田中

女房役だった嶋コーチがいるヤクルト

 だが、21年に楽天に復帰以降は3年連続シーズン負け越し。打線の援護に恵まれない登板があったのは事実だが、年を重ねてパフォーマンスが下がっていった。直球が走らず空振りを奪えないため、変化球でかわす投球になり痛打を浴びる。昨オフに「右肘関節鏡視下クリーニング術」を受けて再起を誓ったが、今季は1試合登板のみ。9月28日のオリックス戦(楽天モバイル)で5回4失点とふるわず、黒星を喫した。

 パ・リーグ球団のスコアラーは厳しい評価を口にする

「全盛期の姿を知っているだけに、ファームで登板した姿を見るとちょっと厳しいかなと感じます。生命線の直球にキレがないので、打者の手元でずらしてゴロに打ち取ろうという意図を感じましたが、制球が甘いので痛打を浴びてしまう。目指している投球像と現実のギャップに、本人が一番苦しんでいると思います。戦力として各球団がどう判断するか。移籍は難航するんじゃないですかね」

 獲得を検討する球団として、有力候補と目されるのが、先発陣のコマ不足が解消できていないヤクルトだ。2年連続5位に低迷した今季はリーグワーストの防御率3.64。先発陣の防御率は4.02で、リーグ優勝を飾った巨人の2.60と大きな差があった。現時点で来季の先発が当確と言えるのは吉村貢司郎のみ。FA権を行使したソフトバンク・石川柊太の獲得を目指すなど外部補強に動いている。25日、田中の獲得に向けて調査をすると報じられた。

 ヤクルトが田中を獲得しても、移籍1年目から2ケタ勝利をマークするのはハードルが高いだろうが、経験豊富な先発右腕は補強ポイントと一致する。楽天時代にバッテリーを組んでいた嶋基宏ヘッド兼バッテリーコーチの存在も心強い。

 ただ、他の球団との争奪戦になるかというと疑問符が付く。セ・リーグ球団の編成担当は、「あれだけの大投手なので獲得したら起用しなければいけない。名球界入りを達成させたいと考えると、若手がチャンスを失ってしまうというデメリットが出てくる。うちは獲りに動かないですね」と断言する。田中は現在、日米通算197勝。名球会入りの基準となる200勝まであと3勝で手が届くだけに、達成したい数字だろう。

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