『芥川賞』や『直木賞』、『本屋大賞』…。小説に関する数ある権威ある賞は、本好きにとっては、どんな新しい作品と出会えるかワクワクするもの。
ミステリー好きなら『このミステリーがすごい!』や『新潮ミステリー大賞』『江戸川乱歩賞』などがそれにあたります。
急激な気温の低下に、2024年もいよいよ年末に近づいてきたことを感じる今日このごろ。2024年はいったいどんなミステリー作品が賞を受賞したのか、振り返ってみましょう。
『このミステリーがすごい!』大賞とは?
宝島社が2002年に創設した新人賞で、通称『このミス』。ミステリー&エンターテインメント作家・作品の発掘・育成を目的にしており、大ヒットにつながる受賞作家や作品を送り出したことで、ミステリー好きからも権威ある賞として注目を集めています。
2024年の第23回『このミステリーがすごい!』大賞は?
2024年10月1日に発表された第23回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞したのは、26歳の土屋うさぎさんによる『謎の香りはパン屋から』です。
主人公の女子大生が、自身が務めるパン屋を舞台に、日常に潜む謎を解き明かしていく作品で、著者自身のパン屋勤務経験も踏まえて描かれているんだそう。注目は、著者の土屋うさぎさんは、現役の漫画家でもあること。
受賞コメントでは「昔から小説は好きでしたが、漫画家としてデビューし、小説に打ち込むタイミングはもうないと決めつけていました。しかし打ち込む時間は作るもの。人生でやりたいことは全部やろう、と『このミス』大賞に挑戦しました。
書き上げることができたのは、パン屋でのバイト経験、大阪での生活、漫画家としての活動、今までの出会い全てのおかげです。大賞の名に恥じぬよう、これからも全力で作品を書いていきたいと思います。」と述べ、同じ創作活動とはいえど、似て非なるジャンルに挑戦し、見事受賞となりました。
受賞作品は2025年1月以降に順次、書籍化される予定のためまだ読めませんが、土屋うさぎさんのマンガ作品は、11月1日発売の『ジャンプSQ. 2024年12月号』にて読むことができます。
第23回『このミステリーがすごい!』文庫グランプリは2作品
文庫グランプリを受賞したのは、いずれも受賞時33歳の社会人男性。
松下龍之介さんによる『一次元の挿し木(仮)』は、ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨と、四年前に失踪した妹のDNAが完全に一致。その謎を解き明かそうとすると、壮大な陰謀に巻き込まれてしまいます。
香坂鮪さんによる『どうせそろそろ死ぬんだし(仮)』は、主人国である探偵業を営む元刑事が、余命宣告された人々が集う交流会に参加し親交を深めるが、不審な死を遂げる人物が現れ…。というストーリー。
いずれの著者も理系らしく、専門誌知己を盛り込んだ作品に仕上がっているよう。こちらも2025年1月以降に書籍化予定です。
過去の『このミス』出身のヒット作家、ヒット作品
これまでに『このミステリーがすごい!』大賞が世に送り出した作家や作品には、大ヒット作もたくさんあります。
代表はなんといっても、第4回大賞受賞『チーム・バチスタの栄光』でしょう。現役の医学博士である海堂尊さんによる医療ミステリーで、映画や連続ドラマ化もされ、映像作品を入口にして原作本として読んだ方も多くいらっしゃるでしょう。
『このミス』の名を、広く知らしめるきっかけとなった作品のひとつでもあります。
海堂尊さんはこの作品をきっかけに、次々とヒット作を発表。メディカルエンターテイメント作家として活躍。2024年7~9月に放映された日曜ドラマ『ブラックペアン シーズン2』でお馴染みの「ブラックペアン」シリーズも、海堂尊さんの原作によるもの。ほかにも精力的に執筆活動を続けています。
中山七里さんによる第8回大賞受賞『さよならドビュッシー』は、映画化、ドラマ化がされました。
第19回大賞受賞『元彼の遺言状』は新川帆立さんの作品。弁護士として働く傍ら作家デビューし、現在は専業作家に。『元彼の遺言状』は2022年9月にドラマ化されました。
第15回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉として紹介されたのは、志駕晃さんによる『スマホを落としただけなのに』。3回の映画化を経て、シリーズ累計100万部を突破しています。
まとめ
(暮らしとモノ班・担当A)
モノ系を得意とする編集・ライター。ユニクロですら店舗で商品を見ても通販で買うほど通販が好き。出版社での雑誌編集経験やファッション通販サイト運営会社でのコンテンツ・マーケティング経験を生かして、みなさまにおすすめのモノや買い方の情報をお届けしています。