玉木さんは描いていたであろう未来を一瞬にして失ったが、職を失ったわけではない。でももし玉木さんが女性だったらきっと、国会議員でいることは難しかっただろう。不倫した女は、職も未来も名誉も尊厳も一気に奪われる。不倫が暴露されたとき、女性にだけ特に厳しい報道や処罰はいつものことだが、つくづく理不尽である。
また、世間は女性の年齢や服装にこうも厳しいのかと毎回あっけにとられるが、今回も39歳という相手の女性は、服装がチェックのミニスカートであったり、胸が強調されるトップスであったり、髪形が幼かったりすることで「年甲斐もない」というバッシングを受けていた。いくつになったって好きな格好をしたっていいのだし、似合えばいいのだし(とても似合っていた)、女性を全方向から責めるのはやはりおかしい。
とはいえ、やっぱりちょっとモヤモヤするとすれば、そしてご家族にはとても気の毒なことではあるけれど、不倫騒動が起きるときに“暴露”されるのは、不倫という事実そのもの以上に、玉木さんって“ああいう女性が好きなんだなぁ”という……知らなくてもいいような情報なのかもしれない。“ああいう女性”と一言で言うときの、言外に含んだその感情を言語化するのはなかなか難しいのだけれど、今回、玉木さんの不倫騒動にモヤモヤするのは、「あ~玉木さんて、そうなんだ」という点につきる。としか、いいようがない。
政治家の不倫問題。
私の世代だと、一番先に思い出すのは、1989年の宇野宗佑総理かもしれない。
宇野さんは当時、棚ぼた的な人事でいきなり総理大臣になったのだが、就任3日後に発売された週刊誌で宇野さんの愛人だったという女性が、宇野さんとの過去の関係を暴露したのだ。それが原因で、その年の参議院選挙で自民党が大敗し、宇野さんは退陣した。
当時の空気としては、“総理に愛人がいた”ことは大ごとであり、しかもそれがお金を介する関係であったことも問題だと捉えられ、さらに “宇野さんが女性にケチだった”、ということは致命的なダメージになった。宇野さんは女性の3本指を握って、月々のお支払いの交渉をしたとのことだが、指1本=100万円じゃなく10万円だったと女性側が暴露し、そのことでケチだね〜! な話として広まったのだ(←バブルっぽい経済感ですね)。