衆参両院で首相指名選挙が行われ、自民党の石破茂総裁が第103代首相に指名された。衆院では1回目の投票で決着がつかず、30年ぶりに決選投票が行われた=2024年11月11日(写真:つのだよしお/アフロ)
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 アメリカではトランプ氏が大統領に返り咲き、日本では少数与党で第2次石破内閣が発足した。石破氏はトランプ氏との関係を構築できるのか。池上彰氏と佐藤優氏が語り合った。AERA 2024年11月25日号からテーマごとに抜粋してお届けする。

【図表を見る】第1次トランプ政権時の対日関係はどうだった?

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【石破×トランプ】

池上彰:私は、日本の総選挙の時にアメリカにいたんですけど、本当にアメリカの共和党と民主党の二大政党制ってダメだなと思いました。徹底的に対立するわけですよ。勝つためには相手を潰さなければいけないということになるので、国が分断されていく。今の韓国もそうですよね。二大政党制によって、選挙で負けた側の大統領はその後逮捕されてしまうというようなことになっています。二大政党制って、実は国を分断させるだけなんじゃないか、と改めて思いました。

 一方、日本の場合は、確かに自民、公明が過半数を割った。だけど、ここからじゃあどうするのかというと、国民民主党など与野党で政策のすり合わせをするという形で妥協を見つけていくということになるわけですね。徹底的に野党をたたきのめすとか、与党をひっくり返すとかいうことではなく、成熟した民主主義国として妥協しながら新たな政策を作っていくという、その第一歩が始まったのかなっていう。私はむしろこれを、ポジティブに受け止めています。

ロシアからのシグナル

佐藤優:石破政権が本格的なことをやるのは来年の参議院選挙後です。来年の参議院選挙は衆参ダブルになるでしょう。それまでの間どういうことになるかというと、裏金議員の多くが安倍派の勇ましい人たちだったから、彼らが整理されます。それから、日本保守党ができ、一番右になったことで、「勇ましい人たち」が一番右じゃなくなり、自民党内では右の存在感っていうものが薄れてくるんですよ。保守党だけは連立で絶対組まないというのが石破さんの立場です。

 11月7日にロシアで行われたバルダイ会議(国際有識者会議)で、プーチン氏は「日本にはまだ賢い人々がいる」と褒めています。この賢い人々は、安保局(国家安全保障局)であり内調のことですが、このタイミングでこの発言を出してきているっていうことは、トランプ氏が次期大統領に決まったことも踏まえて、日本との関係においても改善の余地があるよっていう明確なシグナルです。

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