イスラエルへ軍事援助
これは、エマニュエル・トッドさんが『西洋の敗北』(文藝春秋)の中で言っているんですが、ウクライナは戦うことによって初めてウクライナ人って概念ができた。トッドさんが言っているのは、この戦争の戦闘が終わった瞬間、ウクライナはバラバラになるだろうと。だから、ウクライナという意識で固めるためには、戦争を続けないといけない。戦争をやめたらウクライナはなくなってしまう、こういう状態です。
池上:その通りだと思います。ウクライナって、国の中が二つあるいは三つに分かれていて、ウクライナの東部はロシア語圏で自分たちはウクライナに住んでいるロシア人だと思っている人たちが大勢いました。だけど、ロシアが攻めてきたことによって、ロシア側に入った人もいる一方で、自分たちはウクライナ人だって自覚を持ってウクライナ側で戦う人たちもいたわけですよね。あるいは、 ウクライナの中部はウクライナ正教だけど、西部に行くとカトリックです。宗教でもいくつも分かれていたものが、ロシアと戦うということによって、ウクライナの国民であるという意識が生まれてきた。ロシアの侵攻によって団結ができたという極めて皮肉な状態になっています。
アメリカはウクライナが負けない程度の支援をしながら、ロシアがヨーロッパに侵攻できないように、ウクライナの負担によってロシアの力を弱めています。それは結果的に、アメリカの兵器産業にとってものすごい利益になるという、極めて皮肉な状態が続いています。もうトランプ氏が一切何も送らないよって言った途端に、ウクライナは負けてしまうという、そういう情勢だということですよね。
(構成/編集部・三島恵美子)
※AERA 2024年11月25日号より抜粋