アメリカの大統領選でドナルド・トランプ氏が当選した。トランプ氏の大統領再任で、ウクライナ戦争は今後どうなるのか。池上彰氏と佐藤優氏が語る。AERA 2024年11月25日号からテーマごとに抜粋してお届けする。
【写真】ウクライナ情勢と戦争の停戦を決めるのは、アメリカとロシアと語る佐藤優さん
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【ウクライナ情勢】
佐藤優:重要なのは、軍備の話ではないんです。いまウクライナでは、軍人の給与を含めた公務員給与と国民の年金をアメリカ政府が負担しています。バイデン政権はその肩代わりをヨーロッパにさせようとしていますがうまくいっていません。そんな状況ですから、ものすごくお金がかかるし、ほどほどにしないといけないってことはみんな考えています。トランプ氏は選挙中、「1日で終わらせる」と言っていましたが、ウクライナは国家予算もない破綻国家なので、アメリカからの支援が止まれば遅かれ早かれ停戦になる。時間が経てば経つほどウクライナ人の死者が増えて、そしてロシアに占領される領域が増えて、なおかつアメリカがウクライナを養う経費がどんどん増えていく。こういう状態だから着地感はもう見えています。あとはタイミングの問題だけなんです。
池上彰:その停戦は、とにかく撃ち方やめにして、そしてその戦線の部分に非武装地帯を作る。つまり朝鮮半島方式ですよね。それぞれの領土の1キロか2キロの間を非武装地帯にし、そこでこの後の話をする。この案をゼレンスキー氏にのますことができるのかどうか。ゼレンスキー氏がのまなければ、「アメリカは支援をしないよ。支援をしなけりゃおしまいだよね」って、こういうやり方をするんじゃないかと思うんですけどね。
佐藤:ゼレンスキー氏は勝敗ラインを、「1991年のウクライナの領土に戻す」って言っちゃった。プーチン氏は勝敗ラインを言っていないから、いつ停戦してもプーチン氏は負けないんですよ。「実は私が心の中で決めていた勝敗ラインが取れている」と言えばプーチン氏が勝利者なんです。一方、ゼレンスキー氏はロシアに併合されたクリミア奪還まで勝敗ラインにしたので、彼は永遠に戦い続けるしかない。こういう状況にまで追い込まれていても、戦争の停戦を決めるのは、アメリカとロシアです。お金がないウクライナに当事者能力はありません。