中学受験は第1志望の学校に不合格で、私立中の2校に合格する。このときは医者の道を志す将来を考え、親子で話し合って学区外の公立中に進学する。ジャガーさんは、大維志くんが「ああ…また勉強しないといけないのか」とつぶやいた言葉が、今も忘れられないという。

「落ちたことがショックだったのではなく、また勉強をしないといけないことがつらかったんだなって。息子は小さいときから動じない性格で、泣いたりショックを受けた姿を人前で見せたりしない。だから、ふと漏らしたその言葉が頭から離れないのかもしれません。その苦しさは私が想像できないものがあったと思います」

 中学受験で難関校に合格しているため大維志くんの学力は高かったが、公立中に入学後は成績が低下していった。「燃え尽きた部分もあったのかもしれません。やる気がなくなってしまって。人間関係でも浮いてしまった時期がありました」と複雑な表情を浮かべる。

 ただ、中学受験に挑戦したことを後悔しているわけではない。ジャガーさんは打ち明ける。

「主人が強制的にやらせたと思っている方がいらっしゃるかもしれないけど、それは違います。妻だからかばうわけじゃないけど、息子の意思は尊重していました。主人からすればやる気がないように見えたのでしょう。小学5年のときに、『やる気がないなら受験しなくていい。おまえの人生なんだから。勉強を一切しなくていいから考えて自分で決めなさい』って伝えて。2週間ぐらいですかね、本当に何も勉強させなかった。その後に本人が『受験する』って言って。志望校に合格するのが一番の目標だと思いますけど、親子でゆっくり話す時間を作って、子供に選択させることは大事かなと思います。日頃から受験について家族でよく話していたので、その時間は凄く大切だったと思います」

 中学受験で得られた財産は、目に見えるものだけではない。

 「ジャガー横田の息子で生まれて、テレビに出てチヤホヤされていた部分があったと思うんです。自分のことしか考えていなくてわがままで。私も甘い部分がありました。でも中学受験で挫折を味わって、痛みを知った。つらい経験ですけど挫折を味わうことで人は打たれ強くなるし、周りを気遣えるようになる。息子は優しさを表現できるまではまだいっていないですが、実際に場の空気を読んだり、相手の考えを読み取ったりしようという意識が見えるようになりました。ネット上で余計なことを発信して、『あんたの行動で、ジャガー横田って名前が出るんだから気をつけなさい!』って怒るときもあるんですけどね」と苦笑いを浮かべる。

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