首相指名選挙が終われば、自民・公明の与党と国民民主党の政策協議が本格化しそうだ。不確実性が増す政治状況で、石破政権はこの難局をどう進むのか。長年、自民党本部の職員として選挙対策を担い、政権交代も経験した元党事務局長の久米晃さんに聞いた。AERA 2024年11月18日号より。
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──所得税減税のため基礎控除等の課税最低ラインを引き上げる「103万円の壁」がひとつの焦点になりますが、与党と国民民主の協議のポイントは?
自民党は国民民主党の協力が、何が何でも必要です。国民民主の方も自民と連携したい。でも、国民民主は、やすやすと与党に乗っかると、「与党化」と見られて参院選挙が厳しくなる。だから、条件をつり上げるわけです。そこの押し合いですね。与党は政権を維持したい、でも国民民主の上げたハードルに応じると税収が減るという問題もある。その応酬をどこで妥協するのか。ただ、基本的には双方とも合意しようとしています。
「自社さ」政権(村山富市首相、1994年)のときは、過半数を持たない自民党が、社会党とさきがけを連立に引き込みましたが、その後両党はほぼ消滅しました。その歴史を振り返っても、国民民主は、自民と押したり引いたり、これからもすごく慎重にやっていくと思いますよ。
立憲にも高揚感なし
──立憲民主党は50議席も増やしたのに、野田佳彦代表の表情はあまりさえません。
立憲には勝ったという高揚感が全くありません。開票日直前の自民・立憲の議席予測は「180半ば対170」くらいだった。それが開けてみれば「191対148」。予想より、かなり差が開きました。比例票もほとんど増えてません。
政局の主導権も国民民主に握られてしまいました。自民党は「大逆風」だったはずですが、立憲には「追い風」も吹かなかった、ということではないでしょうか。
──「3度目の政権交代にかける」と言っていた小沢一郎さん(選対本部長代行)も動いている様子が見えない。
小沢さんの立場は、自民党の「最高顧問」の麻生太郎さんのような「名誉職」ですから。裏金問題は今度の総選挙の大きな争点ではあったけれど、立憲には、プラスアルファの政策が見えませんでした。