久米晃さん(くめ・あきら)/元自民党事務局長。現在は「選挙・政治アドバイザー」。1954年、愛知県生まれ。80年に自民党本部職員。党選対本部事務部長。2019年に退職(写真:金本裕司)

──石破政権は、「短命」ですかね。いつ不信任案を可決されるかわからない少数与党の悲哀はあるけれど、「穏健保守」と言われる国民民主だけでなく、立憲や維新も巻き込めないのでしょうか。自民党内では足を引っ張る勢力が落選して激減しました。うまく立ち回れば、意外と長持ちするのでは。

 いや疲れ切っている、という人もいますよ。あんなに友だちが少なかったら、ぼくなんかノイローゼになっちゃう。個人的に近い人は野党にいます。野田さんも最初は「親しい話ができる仲だ」と言っていました。どちらかというと穏健保守的な、ハナシができる同士が、なんとなく真ん中に集まりつつあるようにも見えます。

「石破降ろし」言えず

──選挙総括のための7日の「両院議員懇談会」は、大荒れになるとの予想もありましたが、意外と静かでしたね。

 あの場で「石破降ろし」をやれば、国民民主との政策協議がパンクするわけでしょう。選挙に対する不平不満はあるでしょうが、「森山(裕幹事長)やめろ」はまだしも、「石破やめろ」と言い出したら、与党ではなくなっちゃう危険さえある。だから、言えないのです。

 国民民主と先に話し合いを始めたというのは、結果として石破降ろしを棚上げした、との効果もあったのではないでしょうか。立憲も国民民主に声をかけてくるはずだから、真っ先に始めたんでしょう。(国民民主党代表の)玉木(雄一郎)さんもそれを待っていたところがあります。

──立憲ら野党側も、動きにくくなりましたね。

 野党にとって残る道は、与党を攻撃して、国民の与党に対する不平不満を煽り立てることですよ。でも、有権者の高い支持を受けた国民民主が与党との交渉に入っちゃったので、すごくやりづらくなった。

 自民も、国民民主という有力なカードを握ったわけだから。これを離したら野党になっちゃう。自民党内はみんな頭にきているけれど、「石破降ろし」というところまでは行けない。落選するなどした70人近くの亡霊がまだ漂っているのだから、自民党内は爆弾を抱えたままの状態が続くとは思いますが。

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既成政党への不信感