先週に多く読まれた記事の「見逃し配信」です。ぜひ御覧ください(この記事は「AERA dot.」で2024年11月4日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のまま)。
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ダウン症のある人でも、医療の進歩でいまや還暦超えも珍しくない。親は自分がいなくなった後のことをどう考えているのか。ダウン症の娘が62歳になった、バイオリニスト・高嶋ちさ子さんの父・弘之さんが語る。AERA 2024年11月4日号より。
長女の未知子はダウン症で、生まれた時は20歳まで生きられないと言われましたが62歳になりました。少し前に歩けなくなってしまい、次女のちさ子も心配しましたが、治って再び福祉作業所へ週1回通えるようになりました。少し血栓ができたようです。家では、私が毎晩薬を塗って足もみをしています。我が家では朝食を未知子が、夕食を私が作ります。妻が7年前に亡くなり、二人暮らしも5年。慣れたものです。
私も90歳になりました。本(『笑う老人生活』〈幻冬舎〉)を出したり、テレビに出たりと、比較的元気な方だと思いますが、正直いつまで続くかわかりません。私がいなくなった後の未知子のすみかを探していました。区役所に足を運ぶなどして、生活圏内にできるグループホームを知りました。未知子には暮らし慣れた地域でこれまでと変わらない生活を続けてもらいたい。私がいなくなっても。
未知子の周りには、助けてくださる友人知人がいっぱいいます。私が出張でいないときには、一緒にご飯を食べてくださる方が同じマンション内にいるし、教会フレンドもたくさん。未知子は社交的で明るいんです。おしゃべり好きで前向き。一人で買い物にも病院にも行けます。でも行政の手続きや、お金の計算はできません。そのサポートだけ周囲が行えば、彼女の人生は大丈夫。瞬発力のある妹も、優しい弟も協力的。本当に彼らに感謝です。
「私たちのところに未知子をよこしてくださり、神様ありがとうございました」という気持ちです。未知子が、私を優しさを持った人間に導いてくれたと思っています。
※AERA 2024年11月4日号