グーグルの「生成AIによる概要」。同じ質問をしても、違う答えが返ってくる。本文中での質問を1時間後にすると、写真のような答えが返ってきた。グーグルの生成AIは独自のもので、マイクロソフト系のOpenAI社のAIは使っていない。OpenAI社のChatGPTも、10月31日より検索にも使えるサービスを開始している。
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 グーグル検索をすると、検索結果のうえに、「AIによる概要」という要約が表示されるようになったことに気がついている人も多いかもしれない。

 たとえば「下山進のメディア論とは?」とグーグル検索窓にいれると、

「下山進さんのメディア論は、新聞業界の衰退とインターネットメディアの勃興、ネットによるメディアの存立基盤の侵食など、メディアの変革をテーマにしています」

 という書き出しとともに、AIからの答えが表示される。

 検索結果である最初のリンク先は、朝日新聞による著者インタビューだったが、これは、スマホだと、最初の画面には表示されず、「AIによる概要」を下にスクロールしてようやく見ることができる。

 グーグルはこの「AIによる概要」をまず米国で今年の5月に始めたが、10月29日、これを全世界100カ国以上で展開することを発表している。

 これは2000年初頭以来の、インターネットは検索で始まるものというデファクトが、大きくかわりつつある、ということなのだが、報道機関に対する影響について今回は考えてみたい。

生成AIが検索にとってかわる

 現在、朝日新聞デジタルにしても、文春オンラインにしても、人々がそのサイトを訪れる経路としては、検索が大きな割合を占める。

 AIが要約を冒頭にだしてしまえば、わざわざ画面をスクロールして、下の検索結果をクリックしてニュースサイトに訪れる人は、少なくなる。

 朝日新聞デジタルは有料モデルだが、たとえば文春オンラインやAERA dot.のような無料モデルのニュースサイトは、1PVいくらの配信型広告で基本なりたっている。流入数が減れば、収入は当然減っていく。

 これが、新聞社や雑誌社で深刻に語り合われている「ゼロクリック問題」だ。

 ガートナーというシンクタンクは2026年までに人々が検索によってサイトをクリックする回数は25パーセント減ると予測している。

 無料モデルのニュースサイトの経営はさらに厳しくなるだろう。

 そして有料デジタルモデルのニュースサイトも、鍵でコンテンツを守ったつもりになっても、実はAIの大規模言語モデルに読み込まれており、記事の中身を、出典をしめさずAIが答えてしまうという問題を抱えている。

 これについては、今年の3月の第20回で、ニューヨーク・タイムズとOpenAIの訴訟をひきながらすでに論じている

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