書店員主導の賞
「売り場からベストセラーをつくる!」をキャッチフレーズに創設された「本屋大賞」の第1回の発表があったのは2004年。今年で20年になる。新刊書の書店(オンライン書店も含む)で働く書店員が、過去1年間に自分で読んで「面白かった」「お客様にも薦めたい」「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票する。
第1回の受賞作は小川洋子さんの『博士の愛した数式』(新潮社)。以来、過去の受賞作はいずれも話題になり、『東京タワー オカンとボクと、 時々、オトン』(リリー・フランキー/扶桑社)、『告白』(湊かなえ/双葉社)、『舟を編む』(三浦しをん/光文社)、『かがみの孤城』(辻村深月/ポプラ社)など、多くの作品のヒットの一翼を担ってきた。
今年の受賞作である『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)は、宮島未奈さんのデビュー作にしてすでに同賞以外にも15の賞を受賞しており、漫画化もされている話題作。続編の『成瀬は信じた道をいく』(新潮社)とともに売れ行きは好調で、出版界の明るいニュースとして報じられている。
もうひとつ書店員主導の賞が、先日第15回の受賞作が発表された「エキナカ書店大賞」。こちらは「エキナカから名著・名作をお客さまに発信する」ことを目的に2013年に始まった。文庫本が中心なのが特徴だ。第10回から選考方法が変わり、JRのエキナカ書店の店員によって選ばれたノミネート作品の中からエントリー期間中のエキナカ書店での売り上げによって決まる。2019年を最後に休止していたが、昨年、「旅」をテーマに4年ぶりに復活。同時にSNSでの投票が選考方法に加わった。昨年の受賞作は、『ももこの世界あっちこっちめぐり』(さくらももこ/集英社文庫)と『ニッポン47都道府県 正直観光案内』(宮田珠己/幻冬舎文庫)だった。
第15回は『1日10分のごほうび』(赤川次郎 他/双葉文庫)、『残り全部バケーション』(伊坂幸太郎/集英社文庫)、『さいはての彼女』(原田マハ/角川文庫)など14作がノミネートされたが、その中から『どこでもいいからどこかへ行きたい』(pha/幻冬舎文庫)が大賞に選ばれた。(ライター・濱野奈美子)
※AERA 2024年11月11日号より抜粋