「飼料代だけでなく、水道光熱費、運賃、人件費などもすべて高騰しました。もともと鶏卵の生産は利幅が少ない(1パック当たり利益は約2%)ため、経営の維持が難しくやめてしまう養鶏場が多いんです。そこに鳥インフルが来て、事態はより深刻化しています」

 養鶏産業に詳しい東京農業大学元教授の信岡誠治氏も、養鶏業者が苦境に立たされていることを明かす。

「鳥インフルエンザの発生が続いており、収束まではもう少し長引くと思います。したがって、卵の価格上昇や不足はこの後も続くとみています。パック卵の価格上昇率は現状で2割程度ですが、飼料価格が7割アップし、採算割れの状態です」

 飼料代が高騰するなか、鳥インフル対策に立ち向かう養鶏業者が苦しい経営を強いられているとしたら、今後は卵だけではなく鶏肉も高騰していくのか。

「ブロイラーでの鳥インフルの発生が少ないことから、現在は鶏肉の価格はそんなに上昇していません。しかしブラジルで万が一、鳥インフルの発生があると鶏肉輸入は即ストップとなります。鶏肉消費量の3分の1はブラジル産ですから、ショックは鶏卵よりも大きくなります。これから南半球は冬期に向かって渡り鳥が北に移動しますので、いつ鳥インフルが発生しても不思議ではありません。すでに3月にはアルゼンチンで260万羽の鶏が鳥インフルで死んだり殺処分されたりしており、ウルグアイでも鳥インフルの発生が伝えられています」(信岡氏)

 信岡氏によると、鳥インフルへの感染が確認された養鶏場が再出発するには最低でも3カ月かかる。さらにヒナが大きな卵を産めるようになるまで約8カ月。少なくとも1年はこの状態が続く見込みだ。苦しむ養鶏業者を救うためにも、エッグショックを機に卵を“物価の優等生”の地位から降ろしてあげることも考えるべきなのだろう。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2023年4月21日号