卵の購入を制限している埼玉県内のスーパー
卵の購入を制限している埼玉県内のスーパー

 鳥インフルエンザの流行が生活を直撃している。これまでに1500万羽を超す採卵鶏が殺処分された。鶏卵価格は高騰し、卵が確保できず商品の販売休止が相次ぐ。“エッグショック”の行方は?

【図で確認】飲食店の卵メニューへの対応がこちら

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 4月5日、東京・築地場外市場に店を出す卵焼きの老舗「つきぢ松露」前には多くの買い物客が集まっていた。

「卵が高いでしょ。買い控えしているから、家では卵料理をあまり食べられてない。今日はおいしい卵焼きを食べたくなって買いに来ました」(江東区在住・50代女性)

「スーパーで買ってもどうせ高いのなら、多少高くても名店の卵焼きを食べたいって、夫が言うからね。今晩のわが家のメインディッシュです」(渋谷区在住・30代女性)

 多くの客が買っていくのは築地本店で買える名物の玉子焼「松露」。1本680円で販売していたが、卵価格の高騰のあおりを受け、3月下旬から750円に値上げせざるを得なかった。

「仕入れ先とは長いお付き合いなので、ありがたいことに卵不足の中でも回してもらえています。でもやはり、仕入れ値はどうしても上がってしまっている。卵を食べたいというお客様がいらっしゃるのでよく売れているけれど、まったく儲かっていない状況です。鳥インフルが収束し、供給が落ち着くまで何とか踏ん張りたい」(齋藤賢一郎社長)

 卵の卸売価格(JA全農たまご、東京、Mサイズ1キロ)は去年3月に195円だったが、今年3月には343円、今月に入り350円まで上がっている。ただでさえ飼料価格が上がっているところに、鳥インフルエンザの感染拡大で卵の出荷数が大きく減少していることが原因だ。“物価の優等生”だったはずの卵の値上がりは、さまざまな影響を与えている。

「この周辺の店では卵が入手できずに人気メニューの親子丼が出せなくなったと嘆いている店もある。みんな大変です。なんとか鳥インフルが収まるまで我慢して乗り切るしかない。そうなってほしくはないけれど、仕入れ価格によってはさらに値上げしなくてはならなくなるかもしれないと考えています」(齋藤社長)

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