「そのとおりです。危ぶまれたジェフ・クーンズの評価を守ろうと、鐘や太鼓で盛り上げるような派手なPR作戦が行なわれました。2008年秋にヴェルサイユ宮殿で行なわれたクーンズの作品展はその頂点と言えるものです」

「なんだか、やっぱり本当の価値がよくわからないふわふわしたものですね」

「市場メカニズムがちゃんと機能するのを期待するのは無理があるでしょうね」

「ですよね」

「また、アートの市場は現物しかありませんから“カラ売り”ができません。これが市場メカニズムがうまく機能しない1つの大きな問題でしょうね」

「“カラ売り”ってなんですか?」

「現物を持たないで、売りから入って市場が下がったら買戻しをすることです。例えば御影さんが、1億円の作品に対して、どう考えても高すぎで、本当の価値は1000万円もないと思ったとするじゃないですか。そして、いずれその作品の値段が暴落するはずだと思えば、作品を借りてきて1億円で売って本当に1000万円に暴落したときに買い戻せばいいわけです」

「なるほど。高すぎると思えば売ればいいわけですね」

「株式市場のようなカラ売りができる市場は、上がり過ぎればカラ売りが上から降ってきますから、それなりの調整があるわけです。しかしながら、アートはその1点しかありませんから、株式のように借りてきて売るようなことはできません。よって、いくら上がっても実際の売りが出て来ない限りストップをかける要因に欠けるわけです」

「ということは、一方通行で上がることになるかもしれないってことですか?」

「そういうふうになる可能性はありますね。バブルになりやすい傾向があるといえるでしょう」

「なるほど……」

「さて、さきほどアートが産業化したと言いましたが、アートの制作方法も産業化しました。ガゴシアンのようなギャラリーに所属する現代アートのスター・アーティストたちは、もはや自分の手ですべてを作るような芸術家ではありません。さきほども言ったように100名以上のスタッフを抱え工房で作品を制作しています。それは、まるでルネサンス期に工房で作品を大量に作ったのと同じです」

「え~、そうなんですね。絵って画家の人が1人で全部描くもんだと思っていました」

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