AERA 2024年11月11日号より

政治家同士の絆が大切、角栄的政治手法の対極

 地域のポテンシャルを最大限発揮させ、地方を活性化させることが重要と考えるのも田中氏と同じ方向性だという。同じ日本海側で生まれ育った人間として、地方を大事にし、地方の産業力を高めることが重要と考えている、と。

 ただ、カネ集めでは、田中氏がカネで派閥の求心力を維持したのに対し、石破氏は政治家同士の絆を大切にした。

 2015年、石破氏は派閥「水月会」を立ち上げた。所属議員はわずか20人。少人数だが、政策立案こそが政治の王道であるという点にこだわった。石破氏は『保守政治家 わが政策、わが天命』の中でこう書く。

「カネ集めの才覚も度量もない弟子の一人が、お金でない絆を何とか作り上げ、小派閥ながら自分たちの理念、政策実現のためにチャレンジした。田中角栄的な政治手法の、ある意味、対極の道を選んだのかもしれません」

 倉重さんも、石破氏と田中氏はタイプが違い、特にカネ集めの点では対照的な存在だという。

「しかし、石破政治の根っこには、対角栄ファザコンなしでは説明できないものがあります」

 ちなみに、石破氏は1983年、26歳の時に慶応大学の同級生だった佳子さんと結婚する。すでに二朗氏は亡くなっていたため、結婚式で父親代わりになったのは田中角栄氏だった。

 石破氏はクリスチャンでもある。

 母の和子氏は、プロテスタントの源流の一つ「本バンド」の一人、金森通倫(みちとも)の孫だった。その母の影響で、石破氏は日本基督教団に属する「鳥取教会」の幼稚園に入る。

 石破氏の成長を見守ってきた元教会役員松田章義(あきよし)さん(90)によると、石破氏は小中学生の時は教会学校に通い、熱心に聖書を学び一生懸命に讃美歌を歌ったという。

「非常に優しい心を持った子どもでした」(松田さん)

 幼稚園のホールで「三匹の子ぶた」のテレビをみんなで見ていた時、オオカミが出てくると「怖いよー、怖いよー」といって、担任の先生の後ろに隠れたという。

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