餌をもとめて海岸沿いをうろつくヒグマ。写真はイメージ

野良犬に「かく乱」されてきたクマ

 クマはあっちを向いたりこっちを向いたり、犬たちにかく乱されるというわけだ。もちろんクマが本気で突進すれば、包囲網は抜けられる。しかし、多少なりともケガをするリスクがある以上、犬との接触を事前に避けようとするのは、当然の反応だろう。

 では、飼い犬と一緒に歩いていればクマを撃退できるのかというと、そう簡単ではないようだ。今泉さんは「近年のクマは犬が厄介な動物であることを忘れつつある」と、警告する。

 日本では、1950年に制定された狂犬病予防法のもと、野良犬の駆除が進められてきた。今泉さんによると、10年ほど前にほぼすべての野良犬が姿を消したといい、その結果、犬に襲われた経験のないクマや、母グマから犬を避けるよう教わっていない子グマが増えているというのだ。

 ここ最近、犬の散歩中にクマに襲われる事件が頻発している背景には、このような“犬を知らないクマ”の存在があると、今泉さんは分析している。

「『人ともちがう、なにか見慣れない生き物が来たな』と関心を持たれてしまい、犬の存在がクマを引き寄せている可能性があります。また、鉢合わせた際に犬が激しく吠えると、クマが興奮して突進してくることも考えられる。犬を連れていることで、むしろクマの被害に遭うリスクが高くなる恐れがあるのです」

暮らしとモノ班 for promotion
2024年この本が読みたい!「本屋大賞」「芥川賞」「直木賞」
次のページ
クマよけの鈴が“逆効果”になる場合も