「幼少期の経験」が同世代へのあいさつを希薄にする

 幼少期のこうした経験により「あいさつ」とは、「特定の大人に好印象を与えるための所作」という意味づけを自然とする子どももいます。

 このこと自体はあながち間違っているとも言いきれません。

 しかし、この感覚が土台となった場合、同世代の人に対するあいさつの意識は希薄になります。なぜなら、そこに対する意味はあまりないのですから。

 そのため、あいさつという行為が、同じ年代のやりとりとは切り離されて学習される可能性があります。子ども同士であいさつをする習慣がない子もいるのです。

「あいさつ」は「挨拶」と書きます。ことばの成り立ちは諸説あるようですが、もともとは仏教の禅宗において、師と弟子が行う問答のことを「一挨一拶(いちあいいっさつ)」と呼んでいたようです。

 本来あいさつは決して形式的なものではなく、お互いが関わりを築くための手段としての意味があるのです。

 実際にあいさつは礼節としての意味合いだけではなく、現実的には他者との関係づくりにも影響します。子どもにとってみれば、友達づくりのきっかけにもなります。子どもの世界でも「おはよう! ねえ、……」の声かけからはじまる関係があるのです。

親はわが子の友人関係に「安心」したい

 ここからは「あいさつを通じた友達づくり」について考えてみることで、「あいさつ」の可能性をさらに広げていきましょう。

 親であれば、わが子の友人関係が気にかかるものです。保育園や幼稚園、小学校時代にかぎらず、中・高生になっても心配は尽きません。交友関係が子どもの気持ちの安定につながることを経験からも知っています。

 だから、今どんな友達と仲良くしているかをつい確認したくなるのです。一般的に小学校では進級するとクラス替えがあります。小学生にとっては、新しい友達ができるタイミングです。

 次の親子のやりとりを想像してみてください。子どもは仮にEちゃんとしましょう。

 こうした質問を投げかけて、友人関係を知ろうとするものです。わが子から友達の名前がでてくると、「よかった、うまくいっているみたい」とほっと胸をなで下ろします。

 それでも、連日のように親の質問は続きます。そのうちに同じ友達のNちゃんの名前がずっと出てくることに気がつきます。

 親は「親友」ということばをすでに知っていることにおどろきます。同時に、自分の子どもには心をゆるせる友達がいる……親として、感慨深い気持ちを抱くのでした。

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