学校給食のパンの提供の中止が全国各地で相次いでいる。給食の大スター、揚げパンは献立から消えてしまうのか。
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「揚げパン」発祥の小学校では
今日は、待ちに待った「揚げパンの日」だ。4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴ると、かっぽう着姿の給食当番が鍋や食器の入ったかごを運んできた。メニューはカレーポトフ、揚げパン、ミカン、牛乳。配膳台の前に並び、盛りつけてもらう。
「みんな、揚げパンは好きかな?」
記者が尋ねると、東京都大田区立嶺町小学校の子どもたちは「はーい」と、いっせいに手を挙げた。揚げパンが好きな理由をこう教えてくれた。「甘さとパンが絶妙にマッチしている」「中が柔らかくて、外が硬い、食感が好き」「砂糖、きな粉、シナモンと、味が選べるのがいい」「大きいから食べ応えがある」
揚げパンは1952(昭和27)年ごろ、同小で初めて作られ、全国に広まったといわれる。栄養士によると、「新しい油を使い、高い温度でサッと揚げるのがおいしい揚げパンを作るコツです」。
そんな話を聞くと、油になじんだ砂糖をまとったパンの甘い香りとともに、懐かしい思い出がよみがえってくる。揚げパンに限らず、今の子どもたちはパンが好きで、残食は米飯より少ないという。
ところが、いま、給食のパンがピンチだ。各地でパンの提供中止が相次いでいる。
採算が合わず給食から撤退
福井市では今年4月から市立小中学校への給食パンの供給が停止。10月から再開されたが、それまでの間は米飯給食のみになった。同市教育委員会などによると、市内の学校を担当していた製パン業者4社のうち2社が「これ以上の負担には耐えられない」「採算が合わない」という理由で撤退したのが原因だという。三重県大紀町、大分県日田市、沖縄県宮古島市などでも今年に入り同様の事態が発生している。
全日本パン協同組合連合会(全パン連)の鈴木賢市専務理事兼事務局長によると、給食パンの製造業者は、約40年前のピーク時には全国に6千社ほどあった。それが現在は1/3以下に減少している。
これまでは、業者の廃業や撤退があっても、その地域の同業他社がカバーしてきた。だが業者の数が減り、その協力体制も限界にきている。