鉄道業界は、列車の遅延などを巡りカスハラが起きやすいとされる。一線を越え、暴力行為に発展するケースも少なくない
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 客からの理不尽なクレーム「カスハラ」が社会問題化している。鉄道会社も例外ではなく、カスハラや暴力行為に発展するケースもある。AERA 2024年11月4日号より。

【図表を見る】10年前に比べて駅員らへの暴力発生件数は減っているけれど・・

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「なんでドアを閉めるんだ、死ね!」

「テメェ、俺は1分でも早く上野に行きてぇんだよ。特急料金がかかるとかそういう問題じゃねぇんだよ。バカヤロウ!!」

 元JR東日本の車掌で、『乗務員室からみたJR』の著書もある関大地さん(40)は、車掌として乗務していた時、こんな言葉を何度も浴びせられてきた。

「バカとか死ねは、日常茶飯事でした」

 JR高崎線(上野-高崎)に乗車していた関さんによれば、多かったのは始発の上野駅でのカスハラ。発車時刻が迫り、向こうから乗客が走って来るのが分かったが時間を守るため電車のドアを閉めた。すると「なんで俺が来るのわかってんのに閉めるんだ、死ね!」と罵声を浴びせられたという。同様のシーンで、乗客から酒をかけられた同僚もいたと関さん。

「暴言を受けたりした時、言い返してしまったら新たなクレームに繋がりかねず、お客様相談室に何時何分の上野発の電車の車掌にこんなことを言われたなどと連絡がきて、査定に響くかもしれないと考えると、うかつに言い返すこともできませんでした」

 お客からの理不尽なクレーム「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。日本の社会はお客を「神様」と崇める顧客重視の姿勢から、見逃す傾向が強かった。しかし近年、標的となった従業員が心身に不調をきたす例も少なくなく、社会問題となっている。それは、鉄道業界とて例外ではない。

 そもそも鉄道業界は、事故や台風による列車遅延などを巡りカスハラが起きやすいとされる。国土交通省が昨年12月に公表した初のカスハラの実態調査では、2022年度に全国の鉄道会社で1124件が確認された。

 罵声に暴言、土下座の強要、SNSへの無断投稿……。最も多い発生場所は神奈川県で220件。次いで東京都(178件)、大阪府(173件)、埼玉県(67件)と利用者が多い大都市に集中した。

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一線を越え、暴力行為に発展するケースも少なくない