女性アスリートが選ぶ着物
園遊会には、五輪などで活躍し、業績を挙げたアスリートも招待される。装いに着物を選ぶ女性選手も多く、異なる魅力を引き出している。
17年春の園遊会には、前年夏のリオデジャネイロ五輪で活躍した選手たちが多く招かれた。卓球女子のメダリストで、中国ではアイドル的人気を誇る福原愛さんは、前年に結婚したばかりで、皇族方からも祝福を受けたことが話題になった。
福原さんが選んだのは、総絞りの訪問着。ちぎった種類の異なる和紙を斜めに配したような曲線の文様「道長取り」のなかに、絞りで藤が表現されるなど、手が込んでいる。前出の原さんは、こう話す。
「繊細な技術に加え統一感のある配色は、絞り専門の染屋さんの真骨頂ともいえる着物です」
さらに、金銀糸による菊の花が巧みに織りあげられた朱色の帯で、落ち着いた雰囲気になっている。
元スキー女子モーグル選手の上村愛子さんも、総絞りの訪問着で09年春の園遊会に出席した。
水色や黄色、桃色や薄い紫のグラデーションが美しいデザインだ。
「桜や竹といった細かな吉祥柄を、絞りで染め分け、埋め尽くした着物はなかなか見られません。静かなる迫力が感じられる訪問着です」
と、原さんは指摘する。
「これぞ正統派の友禅染め、という雰囲気です」
と原さんが話すのは、11年の秋の園遊会に出席した、元サッカー女子日本代表の澤穂希さんの着物だ。
澤さんは11年、「なでしこジャパン」主将として、女子サッカーワールドカップの初優勝に貢献し、FIFA最優秀選手賞を受賞。この年の園遊会には、友禅染の振袖姿で出席した。
原さんは、澤さんの着物について、こう指摘した。
「重ね衿を選ぶのはすごく難しいのですが、澤さんが選ばれた鴇色(とき色)の重ね衿は、振袖の水色に絶妙な塩梅で映える配色です」
今回の秋の園遊会には、陸上女子やり投げの北口榛花さん、スケートボード男子ストリートの堀米雄斗さん、柔道の阿部一二三さんといったパリオリンピック、パラリンピックのメダリストたちや、建築家の隈研吾さん、歌手で俳優の杉良太郎さんなど、各界で功績のあった約1900人が招かれている。
招待者の見事な装いが楽しみだ。
(AERA dot.編集部・永井貴子)