天皇、皇后両陛下が主催し、東京・赤坂御苑で春と秋に開かれる園遊会。今年は10月30日に催される。女性皇族の華やかな装いが楽しいイベントだが、見事な着物に身を包んだ著名人らにも注目だ。アスリートの豪華な総振袖、「着物の似合う女優」の格調高い訪問着、俳優ならではの着こなし……。見応えのある装いからは、それぞれの個性やこだわりもうかがえる。
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俳優の藤原紀香さんは、日韓親善大使を務めていた2002年10月、秋の園遊会に招かれた。
この時の藤原さんが着用したのは、カトレアを主役にした訪問着。
京都市で京友禅の誂えを専門とし、著名人らの顧客も多い「京ごふく 二十八」を営む原巨樹(はら・なおき)さんは、
「身長の高い藤原紀香さんだからこそ、裾から濃淡のあるデザインが美しく活かされています」
と話す。
「有名な作家の作品です。カトレアを中心にした草花は色彩豊かに染め分けされ、金色の輪郭線が華やかさを添えています。丁寧に仕上げられ、工房の特徴がよく出た一枚です」
帯や小物も合わせて、すこし洋風でモダンな雰囲気が紀香さんによく似合っていると話す。
文化勲章や国民栄誉賞に輝き、12年に92歳で亡くなった森光子さんは、09年の秋の園遊会に出席。上皇さま(当時の天皇陛下)との会話のなかで、13歳のときに陛下の誕生を祝うサイレンを聞いたというエピソードに続けて、「鳴った鳴った…サイレン… 皇太子さま お生まれなぁった、という歌詞もちゃんと覚えております」と歌ったことが話題になった。
このときの森さんは、「着物の似合う女優」の呼び名にふさわしい、格調高い訪問着。
深い紫地の色に目が行くが、原さんによると、紫色は匙加減一つで品格が変わってしまう。
「いまは濃い地色の着物がつくられることも少なくなりました。森光子さんがお召しのような訪問着には、めったに出会えないでしょうね」
肩から裾にかけては豪華な金彩の「道長取り」文様に、藤や松竹梅の吉祥柄が配されている。紫地の訪問着に合わせた白地の帯には手刺繍で菊が表現され、その格調の高さはさすがだと、原さんは話す。