犯罪者グループに売られる「闇名簿」。強盗に入る狙い先などを見つけるために使われる。リストの中には、「高額預金者」などのカテゴリーも存在する。預金額が漏洩していることがわかる
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 首都圏で多発する一連の強盗事件では、闇バイトで集まった実行役らが逮捕された。募集の際には、「ホワイト案件」と書かれていたり、なかには「コールセンター」「タクシー業務」などと書いてあり、正規の求人と装うケースも少なくない。身分証明書などを送らされるため、抜けようとすると脅される。そうして犯行にかかわったら最後、警察に捕まるのは実行役だ。絶対に手を出したらいけない闇バイトの実情を追った。

【独自入手】“闇名簿”の数々。クレカから住民票まであらゆる種類の“狙い先”が載っている

「若い人らがお金欲しさに安易な考えで闇バイトに手を染めてしまう。『グレーだけどそこまで大ごとにはならない』『逮捕されない』などと誤った情報を信じて簡単に考えている」

 ある県警の生活安全課の課長がそう話す。これまで少年らによる非行を取り締まってきた課長は、「犯罪に手を染める人の特徴が変わってきた」と言う。

「昔みたいにヤンキーとか、いかにもワルというより、大人しそうな子が犯罪にかかわるケースが増えてきた。特に闇バイトなどは」

実行役が捕まる

 闇バイトは、詐欺や強盗などを指示する犯罪グループが募集する、詐欺の“受け子”や“出し子”、強盗の実行役などだ。8月以降相次いでいる闇バイト強盗事件で、逮捕された人数は30人を超え、うち8割が10〜20代だった。

 募集の舞台は主にSNSだが、求人サイトにも掲載している。

 警察庁によれば、2023年1月〜7月末に検挙された被疑者で、受け子になった経緯について、「SNSからの応募」(46.9%)が最多で、「知人等紹介」(27.5%)、「求人情報サイト」(4.9%)と続いた。

「UD」(受け子出し子の隠語)、「叩き」(強盗の隠語)といった直接的な文言から、「ドライバー」「コールセンター」「探偵業務」「タクシー業務」といった職業を書いて募集している。直接的な単語を使う場合は、警察によるサイバーパトロールに引っかかるのを“防ぐ”ため、文字と文字の間にスペース(空白)を入れるような細工もしている。

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特殊詐欺元主犯格「闇バイト、一度踏み入れたら戻れない」