和田:あのエピソードが印象深かった、とおっしゃる方が多いんですよ。
安田:わかります。僕だってパソコンを叩き壊してやろうかと思ったり、締め切りも原稿も、何もかもかなぐり捨てて、誰もいないところへ逃げ出したい!と思ったり。
和田:えー? 安田さんでもそんなことあるんですか? 私が花壇を踏み荒らしてやりたい!と思った日から10年が経ってるんですが、あの頃に私が感じていた誰かを妬んだり恨んだり攻撃したくなるような息苦しさって、今はもっと大きくなってる気がするんですよね。
安田:この本を通して、同じような思いを抱いた人って、多いんじゃないかと思うんです。特に非正規で働いてる人、女性であるというだけで様々な不利益を強いられてる人、漠然たる不安に苦しんでいる人。本の前半でも書かれているけど、僕らは今、高度経済成長の時代には生きていないわけですよね。低成長どころか、むしろ「どこまで落ちていくんだろう」っていう社会にいる。
和田:若いころは社会も経済も、ずっと成長し続けるものだと思ってましたけど、今は、とてもそうは思えないじゃないですか。あらゆるものの値段が上がって、スーパーで伸ばした手を引っ込める。近所のスーパーで大好きなマリービスケットが、130円から180円に値上がりしていて、 ささやかな楽しみなのに、もう、気軽に買えないじゃん!って。矮小な話ですけど。
安田:それ大事なことだと思って、僕はメモしてきたんですよ、本に出てくるマリービスケットと1機149億円の戦闘機の話。
和田:わぁ、それはうれしい。防衛費を倍増させ、1機で149億円もするF35A戦闘機を何機も買うそれって、マリービスケット、何枚分だよ。そもそも、そんなに戦闘機、いるのかよ?って。でも、そういうことを言うと「国を守らないでどうする」「お花畑だ」「ぱよくが」って責められる。
安田:でもね、僕、それこそが政治だと思うんですよ。マリービスケットも戦闘機も地続きだし、政治と生活はつながってる。困窮も不安も、誰にでも起きること。戦闘機の値段をお菓子に例える。これを読んで、それこそが政治に必要なエネルギーだと僕は思った。