立浪監督が、ビシエドに対して「代打は、プライドが許さないかもなあ……」と思っていたのかは定かではないが(たぶん思ってなかっただろうが)、重要なのは、接する相手の年齢や過去の実績によっても、求められるマネジメントは変わってくるということだ。

初ホームランにオールスター 環境とマネジメントが選手を変える

 両チームの話題といえば、昨シーズンの「2対2トレード」も記憶に新しい。それぞれの選手が新天地で活躍を見せているが、中でも出色なのがドラゴンズからファイターズに移籍した郡司裕也だろう。

 ドラゴンズ時代は出場機会に恵まれなかったが、昨シーズンはプロ初ホームランを放つなど躍動。今季はオールスターゲームのファン投票で2位にほぼダブルスコアをつける票を獲得し、自身初の出場も果たした。

打力はドラゴンズ時代からも高い評価を受けながらも、出場機会に恵まれなかった郡司。日ハムでは2桁本塁打を放つなど、新庄監督のもとで文字通り才能を開花させた(編集部作成)

「私自身もそうだが、環境が変わることで能力が大きく変化するケースは多々ある。私自身、かつての職場で『できない社員』で、厳しい視線を注がれることが多かった。こうした評価はなかなか覆せないものだ。

 しかし、転職によって過去をリセットしたことで、自信を取り戻すとともに成果を出せるようになった。もちろん環境を変えることが常に良いことではないが、ポジティブな効果をもたらすケースは非常に多い」(横山氏)

 もちろん、トレードで移籍した経緯から考えると、もともとポテンシャルがあったのは間違いない。しかし、それをそのまま発揮し、選手が活躍するようになる背景には監督の手腕あってこそだ。郡司が大きく飛躍できた裏には、ここまで触れたような新庄流のマネジメントがあることは間違いないだろう。

 監督3年目、2年連続最下位と共通点のある両チームだが、シーズンが終わった今、ドラゴンズは3年連続で最下位、かたやファイターズは6年ぶりのAクラスと明暗が分かれた今シーズン。要因の一つには、こうしたマネジメントの違いがあったといえるのではないだろうか。

 CSファイナルステージ進出を決めた14日の試合後に行われたヒーローインタビューでは、ベテランリリーフの宮西尚生が新庄監督への感謝を述べるなど、チームがますます一丸になっている印象がある。

「個」に向き合い、「集団」をもひとつにする……そんなマネジメントスキルを持っている人は、プロ野球はもちろん、現実の企業にもそこまで多くないだろう。

 新庄監督率いるファイターズの躍進は、われわれに実に多くのことを教えてくれるのだ。

前編はこちら:新庄監督「6位→2位」若手を伸ばす育成力の本質 大原則「機会は平等に、評価は公正に」を守った

(鬼頭 勇大 : フリーライター・編集者)

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