【カウンセラー、ソーシャルワーク学者】市川ヴィヴェカさん(38):Ichikawa Viveka/カナダ在住。英語と日本語の多文化多言語セラピー・カウンセリングとソーシャルワーク研究を行う。日本人の母とイギリス人の父を持つ(撮影/写真映像部・和仁貢介)

下地:日本は家父長制の規範がまだ強く、男性は人前で泣いたり弱音を吐いたりすることが男らしくないとされ、自分の経験を言いづらくなり、表面化しにくいというのはあるかと思います。これが女性だと、幼少期の頃から外見についてとやかく言われることが多く、ミックスルーツの方はそこに人種的なものが交差していくわけです。

ハーフなら美しいはず、ルッキズムにも晒される

市川:テレビや雑誌でミックスルーツの人をよく見ると思いますが、きれいな方も多いから、ハーフなら美しいはずと思われる。そうするとそこからはずれた人は、「痩せろ」と言われたり、「ハーフのわりに○○だね」と言われたりして。ルッキズム(外見至上主義)からのプレッシャーに幼いころから晒されているミックスルーツの女性も多いです。

下地:白人ルーツに対する日本人特有のフェチズムみたいなものが女性に向いているのかなと思うこともあって。白人・ヨーロッパ系の人たちが「ハーフの子どもがほしい」とよく言われているんですが、変にうらやましがられたり、変にほめられたりするのも、ミックスルーツがよく経験することです。

市川:そうですね。ミックスルーツの方は、そうでない方よりも男女ともに摂食障害率が高いというデータもあるんですが、物心がつく前から他者から自分の体に対する注目を浴び、常に他人から自分の体に対してコメントを受け続けてしまう。そのような体験が摂食障害につながっていくというのは納得のいく話です。

(構成/編集部・大川恵実)

【社会学者】下地ローレンス吉孝さん(37):Shimoji Lawrence Yoshitaka/日本におけるミックスルーツの差別などを研究。沖縄と米国のクォーター。著書に『「混血」と「日本人」 ─ハーフ・ダブル・ミックスの社会史─』など(写真:本人提供)

AERA 2024年10月28日号より抜粋

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