日本に生きるハーフやミックスの人たちの大規模調査はされておらず、生活状況や直面している課題や悩みなど様々な実態がつかめていない(写真:写真映像部)
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 7月に発表された調査結果で、ミックスルーツに対するマイクロアグレッション(無意識の差別や思い込み)が浮き彫りになった。そこに性別による差別が加わるケースもある。調査をした下地ローレンス吉孝さんと、市川ヴィヴェカさんが現状を語り合った。AERA 2024年10月28日号より。

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下地:7月に調査結果を発表した「日本における複数の民族・人種等のルーツがある人々のアンケート調査」では、複合差別を調査するための質問項目を設けたのですが、ミックスルーツに女性性が重なる、あるいはそこに若さが加わることで、より差別されているのではないかと書かれている方は多かったですね。複数の要素が組み合わさることによって起こる差別である「インターセクショナリティー」に直面している人が多いことが明らかになりました。

市川:本当に。人種に性別が重なることで、差別や抑圧はより複雑で深みを増すというのは、米国の社会学者のパトリシア・ヒル・コリンズが指摘していますが、アメリカの研究では、ミックスルーツの人とそうでない人を比べると、パートナーからの様々な暴力・虐待やレイプなどの経験率がミックスルーツの方が格段に多い結果も出ています。

下地:今回の調査でも、女性は「性的に好きだ」「将来胸が大きくなるだろうね」といったことを言われたり、じろじろ見られたり、性的な目線を感じたり、髪の毛を触られたりと、セクシュアルハラスメントを受ける方が多かったです。あとは、店員が急にため口になる、タクシーの運転手に粗雑な態度を取られるなど、なめられた態度を取られるというような記述も多くて。そういった態度、加害をしてくるのは男性が多いと書いた方もいました。

市川:そうですね。ただ私が一つ印象に残っているのは、男性が飲み会やバイト先で性器の大きさをからかわれると書いていたこと。男性が性器の大きさをからかわれることは、女性が胸の大きさをからかわれるよりもっと「嫌だ」と言いづらいかもしれないですね。見えづらいマイクロアグレッションのひとつだと思いました。

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ハーフなら美しいはず、ルッキズムにも晒される