休みの日は浅草に足を運ぶ。路地裏にあるアンティーク店「東京蛍堂」もその一つ。大学で日本舞踊を習って以来、着物にハマる。知己が増え、最近は三味線の師匠、三代目ミカド天風の稽古にも通っている(写真/篠塚ようこ)

 そこから、吉原遊廓に生きた女性たちの日記や手記を貪(むさぼ)り読む。分厚い古書に日常の些細(ささい)な出来事から、性感染症や中絶事情など命に関わる過酷な現実まで綴(つづ)られていた。そんな日常を生き抜く彼女たちの強さに心を揺さぶられた。

 やがて、個人活動として、吉原の跡地巡りを始める。毎回、友人ら数人を連れて、ツアコンのように案内した。また、大学内の一角に部屋を借り、「和子の吉原紡ぎ語り」という勉強会を立ち上げる。活動時は、いつも大好きな着物姿。活動が、女性史を専門とする東京外国語大学の教授(当時)、金富子の目に留まる。同大大学院に招かれ、臨時授業を受け持ったこともある。探究の範囲を、日本軍「慰安婦」や性産業の歴史にも広げていく。

 女性史・ジェンダー史が専門で一橋大学客員研究員の平井和子(69)は、吉原跡地の茶屋で「紡ぎ語り」を聴いた。平井は福田の語りには、「この人は仲間」と女性に感じさせるシスターフッドがあるという。

「彼女の学びは頭でっかちじゃない。歴史を書物で紐解(ひもと)きながら、街で感受したものを『姉妹のように感じた遊女たちの現実』として伝えていく」

避妊や中絶の方法 あって当然のものがない

 江戸時代の遊廓から日本の性産業の歴史を学ぶうち、時々の政策に女性が左右されてきたことを知る。性産業に従事する女性が利用され、やがて社会から排除された。戦後、米兵から「日本の『一般』婦女子の純潔を守る“女の特攻”」として都合よく持ち上げられた時期もある。

 一方、スウェーデンは1999年に世界で初めて性的サービスを買う人が罰せられる法律が施行された。法に賛否両論はあるが、「そんな法律が通る国を見てみたい」とICU在学中にスウェーデンの大学に留学する。

 現地でボーイフレンドがいた時期もあり、「自分を大切に」が政策ですべての若者に体現されていることを実感。ネット上で頼れる性の情報が豊富だ。避妊、性感染症、性的同意、パートナーとの関係性、性の多様性、さらにセクシュアル・プレジャー(性の快楽)なども取り扱っていた。

 避妊法は女性主体の手段が多く、約10種。ユースクリニックで、若者は無料か安価で手に入った。助産師に「自分を大切にしてえらい!」と言われた。緊急避妊薬も薬局で安価に売っているのを発見。中絶も女性が自己決定でき、権利として無料だとわかった。

 避妊や中絶といった女性の体を守る砦は、選択肢を用意するだけではなく、たどり着く「アクセス」を保障することが国の重要な責務だと知る。

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誰も守られてないじゃん!って気づいてしまった