吉原弁財天でお参りする福田。吉原の地は「もう私と切り離せない場所」。江戸時代に遊廓が移された経緯も、関東大震災で遊廓の女性がこの池に逃れ溺死した悲劇も、目の前で起こったことのように語る(写真/篠塚ようこ)

99%が劣等感で覆われる 「女らしく」あろうと頑張る

 福田は「#なんでないのプロジェクト」を主宰し、「性と生殖に関する健康と権利」(SRHR:セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)を推進してきた。「自分の身体や人生のことは自分で決める」という“性の自己決定(自由)”と、避妊や中絶をはじめ身体を守る手段の“選択肢”などを保障する考え方だ。

 政府や国際機関への働きかけも積極的に行う。染矢明日香らと設立した「#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」では、福田らが市民に呼びかけたこともあり、23年1月に異例の約4.6万件ものパブリック・コメントが国に送られた。その内訳は「98%が薬局販売に賛成」と高率だった。

 避妊に失敗した女性や性暴力被害に遭った女性にとって緊急避妊薬は“最後の砦(とりで)”。すぐに服用すれば、高い確率で望まない妊娠を防ぐことができる。だが、高額かつ服用には処方箋が要る。23年11月から試験的に薬局での販売が始まったが取扱店舗数が少なく、必要とする人たちにすぐに届く環境は整っていない。

「まだ目標の3合目ぐらい」と福田はいう。

 福田らは9月末、自民党総裁選・立憲民主党代表選の候補者全員に、緊急避妊薬の薬局販売への意見を「公開質問状」を通じて問うた。その回答を発表する会見で、「少子化の中で緊急避妊薬の議論をすべきでないという論点への意見は」と記者から質問を受けた。福田は迷いなく答えた。

「問題は数ではなく、本人の産みたい・産みたくない、という意思がどれだけ守られているかであり、性と生殖のことも『権利・健康の話』というふうに受け止められてほしいと思っています」

 彼女が“性の自由と選択肢”を求めるようになったのは、なぜか。

 東京・新宿区に生まれる。生後すぐ両親が離婚し、「父の存在が無だった」こと。生まれた時から親指が欠け、左手の指は4本であること──。福田はこの二つの葛藤を抱えてきた。

 母は2代前から続く不動産の管理業。同居する母方の祖父母にも囲まれ、好きなミュージカル映画を繰り返し見て天真爛漫(てんしんらんまん)に育つ。

 だが小1の時、同級生と鬼ごっこで遊んでいて、身体の特徴をあだ名にして呼ばれたことがあった。

 中高一貫校の鷗友学園女子中学高等学校に入学後は、級友から聞くたわいない会話に、両親がいる他の家庭との違いを感じる機会が増えた。

 離婚の理由を聞くと、母は「あなたには早い」。空気を読んで、それ以上は聞かなかった。ただ、「なぜ私だけ父がいないの?」という漠然とした疑問は残る。一人悶々(もんもん)と考える時間が増えていく。

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吉原遊廓の勉強を始め 「紡ぎ語り」で跡地巡りも