樋口は9月のブロック大会・東京選手権で優勝、今季の好スタートを切った。その際2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪への思いを問われた樋口は、「うーん、まだそこまでは」と言葉を選んでいる。

「オリンピックに向けて、何かを調整というよりは……本当に、その一つのシーズンで、いろんなことが大きく変わっちゃうので。それは平昌(五輪)のシーズンでも経験したことだったので、『オリンピックに絶対行きたい』という気持ちを持って臨むというよりは、自分のできることを毎試合全部出し尽くすことが、一番大事かなと思います」

 スケートアメリカの記者会見でミラノ五輪への思いを問われた際も、樋口は慎重だった。

「今回の試合がシーズン最後の試合だったら、また来シーズンのことを考え始めるかなと思うのですが、まだ初戦なので。今回の内容には全然満足できていなくて、『次に向けて』という試合になったと思う。オリンピックに向けてというよりは、今シーズン結果を残すことを、今はまだ考えています」

 2016年から出場してきたGPシリーズで初優勝できた理由を問われると、自信を持って滑る練習をしてきたことを挙げた後、笑いながら付け加えた。

「あとは、運が70%ぐらいかなと思います」

 地力と賢い試合運びが勝因であることは前提として、もし幸運があったとしたら、それはふさわしい選手にしかるべきタイミングで訪れるものだろう。2018年世界選手権の銀メダルと同様に、2024年スケートアメリカの金メダルは、樋口新葉がスケートの神様に愛されていることを示しているのかもしれない。(文・沢田聡子)

沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。フィギュアスケート、アーティスティックスイミング、アイスホッケー等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。2022年北京五輪を現地取材。Yahoo!ニュース エキスパート「競技場の片隅から」

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