グランプリシリーズ初制覇を果たした樋口新葉
この記事の写真をすべて見る

「生まれて初めてグランプリ(以下GP)シリーズで優勝することができたので、今はすごくびっくりしているんですけど、とても嬉しいです」

【写真】樋口新葉の写真をもっと見る

 GPシリーズ第1戦・スケートアメリカを制した23歳の樋口新葉は、喜びを口にした。

 ショート4位で臨んだフリー、樋口は数々の名プログラムをともに創り上げてきた振付師、シェイ=リーン・ボーン氏による『Nature Boy /Running Up That Hill』を滑った。ミスはあったものの落ち着いたリカバリーで豊かな経験を感じさせ、エモーショナルな表現もみせる。フリーの得点は130.81、合計点は196.93で、GPシリーズ初優勝を果たした。

 樋口のGPデビュー戦は、2018年平昌五輪プレシーズンの2016年フランス杯(3位)である。15歳だった当時を、樋口は「最初のシーズンが、一番強い気持ちで優勝を狙っていた気がする」と振り返っている。

 そして迎えた平昌五輪シーズン、樋口はクールなフリー『007』(シェイ=リーン・ボーン氏振付)をひっさげ、好スタートを切った。2017年GPシリーズではロシア杯3位、中国杯2位と好調をキープし、ファイナルに進出。しかし、シーズン後半にかけて調子は下降していく。ファイナルでは6位、五輪代表最終選考会の全日本選手権では怪我もあり4位。平昌五輪代表の2枠に入ることはできなかった。

 平昌五輪代表から漏れた樋口だが、同年の世界選手権に出場、魂のこもった『007』を滑り切って銀メダルを獲得した。実力を示したが、五輪の舞台に立てなかった悔しさは、五輪でしか晴らせなかっただろう。

 そして4年後の2022年北京五輪で代表に選ばれた樋口は、個人4位・団体2位と好成績を残す。力を出し尽くした五輪の翌季は、右足の疲労骨折の影響で、2022年9月のロンバルディア杯出場後、残りのシーズン全休を発表。復帰した昨季は明確な目標がなかったと振り返るが、今季は結果を求める気持ちが戻ってきた。

次のページ
「運が70%ぐらいかなと思います」