そして、米国の無理難題によって、深刻な不況となった90年代の日本経済……。日本の経営者たちは失敗を恐れるあまり、守りの経営にかじを切った。
かつて、ソニー創業者の盛田昭夫氏は私に、口癖のように「世界のどの市場にもないものの開発に挑む。だからこそ付加価値がつくのだ」と語った。多くの企業がその挑戦をすることで経済が成長したのである。
だが、その挑戦には複数回の失敗を覚悟しなければならない。90年代の深刻な不況以後、日本の経営者たちは失敗を恐れて挑戦しなくなったのだ。
その結果、米国などで開発された商品をより安く生産、コストカットに専念して、賃金も上がらず、成長しなくなったのである。
アベノミクス失敗が明らかになった後、斎藤健氏、冨山和彦氏、新浪剛史氏らとプロジェクトチームを結成し、具体的な作業に取り掛かったのだが、安倍首相は途中で体調を崩して退陣してしまった。
そこで現在、岸田文雄首相に構造改革に取り組むよう提言している。少なくとも5年は遅れてしまった日本経済の抜本的改革を何とかして実らせたいと考えている。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2023年4月21日号