ジャーナリストの田原総一朗さんは、低迷する景気対策として抜本的な改革が必要だと説く。
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安倍晋三政権は憲政史上最長であった。だが、肝煎りの政策であったアベノミクスによる景気拡大は成功しなかった。
第2次安倍内閣がスタートした翌年の2013年に安倍首相は、当時日銀の総裁であった黒田東彦氏と組んで、異次元の金融緩和、思い切った財政出動を行い、これで内需は拡大し、経済は成長すると自信を持って宣言していた。
だが、安倍首相が自民党総裁に3選された18年に、内需拡大も経済成長もしていないことがはっきりした。そこで安倍首相は私に、「どうもアベノミクスがうまくいっていない。一体どうすべきだと思うか」と相談した。
私は何人ものエコノミストと相談し、安倍首相に「この国の経済構造、つまり日本的経営を抜本的に改革すべきだ」と提案した。
1980年代、つまり中曽根康弘内閣の時代、日本はジャパン・アズ・ナンバーワンと称されていて、経済は世界で最も活性化していた。そして、商品をどんどん生産して米国に輸出していた。
そのために、米国は貿易赤字が大きくなり、経済は悪化。当時のロナルド・レーガン大統領は、米ソ冷戦時代で米ソが対立していたにもかかわらず、「敵は日本だ」と決めつけ、日本経済の弱体化を図った。
当時の竹下登蔵相をニューヨークに呼び寄せ、「米国に大量輸出できるのは、円が安すぎるためだ」として、無理やりに円高にさせた。いわゆるプラザ合意である。
それでも輸出量が落ちないので、「大量輸出をするのは内需拡大ができていないためだ」として、いわゆる前川リポートによって強引に内需拡大させようとした。これにより日本はバブル景気となる。
さらに、日本経済を弱体化させるために、スーパー301条など規制策を乱発した。
当時、中曽根首相に「なぜ、日本は米国の無理難題に応じなければならないのか。なぜ拒否できないのか」と問うと、「拒否したくてもできない。日本は安全保障を米国に委ねているからだ」と悔しそうに答えた。