「デキマスヨー」
「QRコード入れた方がいいですかね?」
「シナクテイイヨ、モウワカッテルカラ!」
何のためのQRコードなのか疑問だが、とにかくビリヤニが出てきて食べる…… 美味い!! こんなに美味かったのか、ビリヤニって!
「1100エンデス」
財布から1500円取り出し渡す。
「レシート、イリマスカ?」
「はい、ください」
レシートを私に渡すとマスターは厨房に戻り、そのままカレーの鍋の前に立った。
まだお釣りをもらってない。400円が返ってくるはずだ。どうしたのだろう? マスターはカレーをかき混ぜている。ことによると、俺が1100円ピッタリ渡したのだろうか? いや、そんなことはない! たしかに1000円札の上に500円玉を載せて渡したのをハッキリと覚えている。財布のなかを確認すると、さっきスーパーのレジで1枚あったはずの500円玉がなくなっている。やはり1500円だしたはず。
なぜだ? マスターは忘れているのか。いや、やっぱり俺が勘違いしてるのか? ……どっちだ? どちらが間違っているのだ? 時間がどんどん経つ。といっても2分くらい。しかしそれが2時間にも感じる。あちらから気づいて返してくるのを爪楊枝で歯の掃除をしながら待つ。じっと待つ。
私の方から「お釣りまだもらってませんよ!」とアピールするには時間が経ちすぎている。今切り出すと、このお客さんはなぜもっと早く言わないんだろう?とかえって怪しまれる気がする。そんなの悲しい。もうこの際、400円は諦めて帰ろうか……と弱気になってきた。
でも待てよ。このまま帰ってしまったら、モヤモヤが残って後々この店に来づらくなるに違いない。ビリヤニは美味しい。また食べたい。でも「400円を諦めた店」というイメージが残るともう足が向かない。絶対に来ない。たかだか400円だ。諦めてもいい。でもここで諦めてしまったら、この人のよさそうなマスターに疑念を持ち、1回しか行ってないのに、この店を、このマスターを嫌いになってしまうかもしれない……。