落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「軌道修正」。
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しょっちゅう「軌道修正」しています。
とある休みの日。
朝起きて、飯食って、家族を送り出し、一人になって「よーし、今日は一日、存分に落語の稽古するぞ!」と思っても「あー、ずいぶん溜まってるな。いっちょ洗濯物でもたたむか! 稽古はそれからだ!」と洗濯物をガシガシたたみ始める。5人分だからけっこう時間がかかる。
それが終わるとさて稽古だぞ、と思いつつ「とりあえず『おむすび』でも観るか……」と9月末から始まった朝ドラの録画を9時30分ごろから見始める。見終わって「まだまだ、我慢のしどころだな……」と心に誓う。
「ブギウギ」「虎に翼」と1年間楽しませてもらったのだから、ここで見放したらバチが当たるというものだ。いわばNHKのドラマ班への恩返しだ。これからも見守るからな、米田結(「おむすび」の主人公)。
とりあえず落ち着こうとコーヒーを淹れる。これを飲んだら稽古に取りかかるのだ、とガリガリと豆を挽く。ハンドルを速く回せば早く稽古が出来るのだが、急いた心を穏やかにするためにゆっくりゆっくりと。
コーヒーが入り、なにかお茶菓子はないかと茶箪笥を探る。チョコレートを見つけテーブルに置いて、コーヒーカップとそれを眺める。「このバランスでよいか?」と配置に悩んでると、テーブルの汚れに気づき台布巾で磨いてるうちに、テーブルの木目に消しゴムやパンのカスが詰まってることに気がつき、子どものコンパスを持ってきてその針で掃除を始める。
そんなことをしていたらコーヒーが冷めたので、氷を入れてアイスコーヒーにして一気に飲み干す。製氷機のタンクに水が無かったので補充すると、冷蔵庫の中に賞味期限切れのものが幾つもあることが気になりその処分を始める。私は早く稽古がしたい。それをなるべくテキパキとやる。茶箪笥のなかに佃煮やら乾き物がたくさんあったのを思い出し、そちらも整理をする。