#カワイイに正解なんてない、という広告メッセージ。Dove(ダヴ)公式ホームページより
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 ボディーウォッシュ製品などを販売する「Dove(ダヴ)」の駅広告が「ルッキズム」を助長していると批判を浴びて炎上した。同広告はEライン(鼻と顎を結ぶ直線のこと)やスペ110(身長から体重を引いた数値)など、美容整形で使われる言葉を否定することで、「カワイイに正解はない」と打ち出した。いわば、ルッキズムに警鐘を鳴らす広告だったはずが、まったく逆の結果になってしまった。広告メッセージが正反対に捉えられた原因はどこにあったのか。

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「ダヴもう買わない」「ルッキズムをあおっている」「容姿に悩んでたりコンプレックスがあったらこれは逆効果と分かるはず」。

 10月7日から、ダヴが東急田園都市線の渋谷駅に掲示した計64枚の広告がSNSなどで大炎上した。

 広告の内容は、「顔の大きさ17㎝」「目と目の間が4㎝」「中顔面6.5㎝」など、美容業界で“かわいい”とされる基準のワードが10個書かれており、そのワードに取り消し線を引き、「カワイイに正解なんてない」と訴えている。

 同広告は、11日の国際ガールズ・デーに合わせて作成されたもので、7日から13日まで渋谷駅構内の階段などに張り出された。

渋谷駅に掲出されたダヴの広告(撮影/板垣聡旨)

 外見で人を判断し偏見や差別をする「ルッキズム」を否定し、女性の“かわいい”の基準は多様であることを啓発しようという意図があったことは、同広告のホームページの記述からも読み取れる。しかし、広告のメッセージは意図とは真逆の意味でとらえられ、「ルッキズムを助長している」として炎上した。

 なぜこんな事態にったのか。

 若者文化と広告表現に詳しい芝浦工業大学教授の原田曜平氏はこう指摘する。

「ルッキズムは社会問題ではありますが、日本ではそれ自体を真正面から否定する広告は受け入れにくいのです。なぜなら、『ルッキズムという言葉は聞いたことがあるけれど、詳しく意味は知らない』という曖昧な感覚で生活している人がほとんどです。そんな中、今回の広告のようにダイレクトに具体例を示して否定されてしまうと、今まで心の奥にあった“深層心理”のようなものを逆に意識させることになり、傷つく人が出てしまうのです」

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表現が直接的すぎた