働き方評論家で千葉商科大准教授の常見陽平氏もこう解説する。

 「企業側が採用段階で求める性格診断テストは、受ける側が“企業に寄せた”回答をしてしまうリスクがあり、材料の一つでしかなかったと思います。今、若者らの間で流行している“MBTI診断”というのは、学生や若者により親しみやすい形でエンタメ化されたものです。就職ナビなどに実装された“自己分析ツール”が、学生や若者の日常に浸透しています。企業側としては、学生が慣れ親しんだツールをそのまま活用してもらいたいという意図もあるのでしょう」 

 常見氏は、人事の効率化を図る上で有用な場合もあるとしつつ、採用や人事での”決め手”になってしまうことには否定的な見方を示す。

あくまで一つの判断材料に

「本来、この手の性格診断テストというのは面接や面談だけでは見えなかった部分や、隠れたポテンシャルや懸念点を見つけるための方法の一つです。しかし、効率を重視するあまり、人事を表面だけで決めてしまう企業もあるかと思います。AI人事というのは以前から模索されていますが、人事や採用はデジタルだけでは判断できず人と人との対話があってのもの。AIやネット上での“診断”だけが決め手になることは避けなければいけないし、それを社員や求職者に伝えることは慎重にするべきです」

 さらに、個人的な人間関係においてもそうした分け方がされてしまうことにも警鐘を鳴らす。

「現代は企業の採用や人事に限らず、性格診断テストなどから、安易に人の分類ができてしまうかのような時代になっています。『私は〇〇型だから、この人とは、この企業とは合わない』と直接関わったこともないのに、先入観だけでシャットアウトしてしまう人もいます。たしかに効率的かもしれませんが、あくまで一つの判断材料である、ということを忘れてはいけません」 

 酒の席での話題にするくらいがちょうど良いのかもしれない……。

(AERA dot.編集部・小山歩)

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