タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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亡くなった坂本龍一さんが反対していた明治神宮外苑の再開発計画。伐採される樹木が低木を含めると3千本を超えるとして、周辺住民などが都に対して認可の取り消しを求め提訴しました。私も神宮外苑エリアには愛着があるので、気がかりです。市民の懸念の声を受けて、新宿区の吉住健一区長は4月4日に「神宮外苑を構成する緑の保存について」という公式見解を発表しました。創建時からある古い樹木は、再開発地区内での移植が難しい場合にも区有地に移植するなどの方針が示されています。再開発の該当地区は宗教法人である明治神宮が所有する土地で、三井不動産などが開発計画を担い、行政としては新宿区と港区、東京都が関わっています。「神宮外苑地区まちづくり」という、事務局のwebサイトを読んでみました。再開発後に樹木の総数は1904本から1998本に増える予定で、樹木の調査データのPDFが公開されています。観光客にも人気の銀杏並木は保存され、植樹エリアを増やし聖徳記念絵画館前に芝生の庭が復活するなどの計画が示されています。
私が気になったのは、銀杏並木のすぐそばに新神宮球場の壁があること。根への影響や、日当たりや風通しが心配です。そこでサイトにあった神宮外苑地区まちづくり準備室に電話していろいろ質問してみました。要望も受け付けていたので、球場の壁を銀杏並木から離してほしい、古い樹木をちゃんと残してほしい、新たに植える樹木にも大きな樹を入れるなど緑の総量が減らないようにしてほしいなどの意見を伝えました。今回の新宿区長の声明もそうですが、計画に市民の声が反映されるよう、行政や事務局に話を聞いて、意見を伝えることが大切ですね。明治神宮も、創建時に関わった専門家たちの高い志を大切に守ってほしいです。
◎小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。寄付サイト「ひとりじゃないよPJ」呼びかけ人。
※AERA 2023年4月17日号